30代 男性エンジニアの やって良かった育児休暇 体験談

まだまだ事例の少ない、男性の育児休暇。たった3週間だが、取得させていただいので、何かのご参考になれば、と思いレポートを書く。

背景

年齢:30代前半(当時) 妻も同学年の専業主婦。
家族構成:長女6歳、次女4歳(いずれも当時)
育児休業を取得したのは、3人目の男児出産のとき。

勤務先:社員およそ100名の精密機械メーカー 勤続10年以内。
職務:技術職 製品開発プロジェクトのリーダー(責任者)。

なぜ取得したか

夫婦の間で、4人目の子どもは考えられず、これが最後の子どもと思っていた。せっかく制度があるのだから、どんなものか体験したいと思った。社内では先行する取得事例があり、もちろん国の法規的にも、取得できないわけはない。
ちょうど出産時期は、担当するプロジェクトの完了時期と被っており、その時期に抜けることに負い目も感じたが、結局人生において何が大切なのか、それは言うなれば赤の他人である会社ではなく、自分の家族である、と感じたからだ。
また、上の子どもを二人産んで、子育てしている妻の体の疲労も心配だった。子どもを産むのは、現代では比較的安全になりつつあるが、それでも命がけの仕事であり、体への負担は想像を絶するもののようだ。

権利の上に眠る者は保護に値せず。
丸山 眞男

という言葉が想起される。権利は行使せねば、役に立たざるものなり。

申請・取得のときの状況

就業規則の問題

以前、先輩が取得していたので、申請すればできるはず、と思っていた。
念のため、就業規則を確認したところ、

配偶者が、常時保育に携われない場合に許可する。

との旨が書いてあった。どうも専業主婦が配偶者の場合は、取得できないようだ。上述したように私の妻は専業主婦であり、諦めかけた。
しかし、昨今の社会情勢においては、配偶者が職についていようが、専業主婦だろうが、男性が育児休暇を取ることは問題ないとされている。
これは、就業規則が時代に即して変更されていないため、不適切な内容となっているのだ。かくなる上は、就業規則を変えてもらう交渉も視野に、管理部署に問い合わせた。

問い合わせたところ、あっさりと育児休暇を認めてもらえた。就業規則を鵜呑みにしていたら、どうなっていたことか。融通が利く会社と言えば、そのとおりだし、いい加減と言えばそうとも言えるのだが、今回は助かった。(その後、会社には規約を実態に即して変更するよう要求し、変更してもらった。)

上司への報告のとき

育児休業するにあたって、上司への報告が必要でる。開発プロジェクトが進行中であり、育児休暇を申請しづらい空気を感じていた。しかし、それは全くの杞憂であった。
まず妻の妊娠を報告した時のことである。

** 私「ちょっと、お話があるのですが。」
上司「何ですか?」
私「3人目の子どもを授かりまして。」
上司「おめでとう。育休はどうするの?1ヶ月?2ヶ月?3ヶ月?もっと必要?」
**
私の上司は、既婚だが子どもは無く、あまり育児とか、家庭に興味が無い方かと勝手に思っていた。(当時、移動してきて間もなく、あまり上司のことはよく理解していなかった。)ところが、上述のような完全に想定外の嬉しい対応をしていただいて、非常に楽になった。また、「もし会社から育児休業取得について、ネガティブな意見や圧力がかかるようなら、自分からも交渉するので安心してください」、と仰っていただいた。これは心強かった。
これからの社会で人材を確保するには、育児休暇等の福利更生を充実させる必要がある、という認識のようだ。私もそう思う。
そのほかに問題はなく、事務的に手続して申請は許可された。

仕事のフォロー

上述しているように担当しているプロジェクトがあり、締め切りは迫っていた。リーダー兼実働部隊みたいな状況なので、私が抜けると仕事はストップしてしまう。
この件については、1人若手の技術者を事前につけてもらい、仕事を一緒にしながら引き継いでいった。こうやって、自分の仕事内容を他者に伝えることができたのは、育児休業が終わった後も、助け合えるので意義があったと思う。

その後、ちょうど育休期間として申請していた日の10日前に出産し、そのまま産後の慶弔休暇をいただき、2~3日出社したら、育児休暇に入った。

期間

3週間である。仕事は引き継いであるとはいえ、1ヶ月の不在は長すぎる気がしていた。また、かつて育児休暇を取得した先輩社員に聞いたところ、最低でも2週間以上は必要と言われていたため、ぎりぎりの間を取って3週間とした。

タイミングとしては、産褥期からの回復をサポートすることを目標として、出産後、自宅に帰ったときを狙った。体力的に辛い時期をカバーするのは有効な狙いと思う。

結局、やってみて分かったが、まず1週間では、ただの休暇で終わってしまう。3人目の子どもとはいえ、家にずっといて新生児のお世話をする経験というのは無い。何をしたら妻の助けになるのか、自分に何ができるのか模索しているうちに、あっという間に1~2週間は過ぎていく。
ようやく、3週目に仕事になれてきて、何かしらの「育児」が自分なりにできるようになった、というところ。

1~2週間でもないよりはましだが、できれば3週以上必要、というのが私の実感。できれば1ヶ月~2ヶ月取れば全く人生観が変わっていたかも。

取得中何をしていたか

うろ覚えですが、だいたい下記の通り。

5:30~6:00 起床
6:00~9:00 朝食づくり、長女、次女のお弁当作り。台所の片付け
9:00~10:00 長女次女の保育園への送迎
10:00~11:00 家の掃除とか買い物とか妻がする家事の代理、普段できないところとかも。
12:00 昼食
13:00~14:00 夕食の準備等
14:00~15:00 赤ちゃんの沐浴
15:00~16:00 保育園に子どもの迎え
16:00~20:00 子どもと自分の入浴、夕食、後片付け、寝かしつけ
20:00~22:00 ここらへんで就寝

*また、これらの合間に適宜オムツ替え等のお世話を行う。

このケースの特徴
もともと、仕事分担的に炊事は私の分担なので、食事作りが多い。また、母乳育児のため、ミルクを与える、という仕事はない。夜の授乳も妻が全て行ってくれた。オムツ替えなどは夜間、(私の目が覚めればですが。。。)手伝った。

上の子どもが2人いる状況なので、上の子どもの相手や世話をどんどんやることになる。
私はしなかったが、事前に奥さんと育児休暇を取ったら何をするか(してほしいか)を話し合っておくと良いでしょう。それを踏まえて自分の家事スキルも高める必要がある。

良かったこと

  • 育児に対して積極的になれた。
    上の子どもたちのときは、自分より妻の方がうまくできるから、と決めつけて最初から妻任せで積極的でなかった。今でも妻からは不満があるだろうが、以前よりはましになったはず。
  • 子どもがより愛おしくなった。(上の子どもたちも。)
    子どものことがより可愛くなった。上のお姉ちゃんたちも。何なら、保育園の他の子たちも。
  • 会社の仕事が、分担された。
    結果的に自分で抱え込んでいた仕事が、若手の社員に分担された。育児休業後も私と一緒にプロジェクトを仕上げてくれて、非常に頼りになる存在となってくれた。
  • 会社や仕事の価値が相対化された
    絶対的な価値だったものが、 大事なものの一つという形に相対化された。

悪かったこと

私の環境はとても恵まれているということか、悪かったことは思いつかない。やってよかったと素直に思えるし、他の人にもぜひオススメしたい。

2019年9月追記:その後色々と人事評価上、不利な評価を受けたことが判明する。経営陣が育児休暇取得について、どのような考えなのかは非常に重要だ。直属の上司が理解がある人だったのは幸いだったが、その上は。。。

経済上の問題

会社からの給料は、育児休業の当該月は1/4分のみいただいた。残りは育児休業給付金で、月給のうちの3週間分の67%が、支払われた。経済的には、ダメージがあるわけだが、育休中も収入が無いわけではない。

これから育児休業される方へ

一生のうちで我が子の赤ちゃん時代というのは一度きりしかないものです。私は育児休暇を取得してよかったと思っています。ふり返ってみると、様々な人や社会制度にお世話になって、取得できたのだと感じます。
しかし、育児休暇を取らない(取れない)父親は薄情とかいうことでは、もちろん無い。社会で働くということも、子どもに対しての責任でもある。
自分自身の価値観に照らし合わせて決断されるのが良いでしょう。

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