技術者がグラフを書くとき知っておくべき4つ+1つのポイント

技術者、研究者が仕事をする中で、グラフを書くことは必須の作業です。今まで自分自身がやってきたことや、後輩、インターンの学生たちに指導してきたことをまとめてみたので、参考にしてください。

グラフを制する者はレポートを制する

グラフは報告書や、論文、プレゼンと言った、相手に自分の成果を報告するときに非常に役立つツールです。このグラフの作成スキルは技術系であればどんな職場でも役に立つツブシの効くスキルです。 例題として、以下のシチュエーションを考えます。温度に依存して出力電圧が変化するサンプル3種類があったとします。あなたはそのサンプルにホットプレートで温度変化を与え、各温度での出力電圧を調査しました。
概略図
調査結果は下の表にまとめた通りです。
このままだと、温度と電圧の関係が分かりづらいのでグラフを書きましょう。エクセルで散布図を作成します。何も考えずに作成すると、次のようなグラフが描けるはずです。
このままではグラフとは呼べません。これはただの図形であり、何ら人に伝える情報を持っていません。これを以下のステップを踏んで相手にきちんと伝わるグラフにしていきましょう。

①基本 軸の名前、単位、凡例、文字サイズ

グラフには軸の名前と単位が必要です。グラフのタイトルも必要でしょう。また凡例(「●サンプルA」のようにどのマークが何を示すか説明したもの)が無いとグラフをまともに理解することすらできません。 さらに、文字サイズはきちんと読み取れるサイズにしましょう。読めない文字はただの模様にしかなりません。
  • 軸の名前 単位
  • 凡例
  • 文字サイズ

そんなの当たり前だよ、と言われるかもしれませんが、 報告書がへたくそな人のグラフはこのレベルからできていないこともよくあります。また急いでいるときなどは意外と忘れてしまうものです。
軸の名前、タイトル、凡例
ここで、最初はグラフの右わきに書かれていた凡例をグラフの余ったスペースに押し込めています。こうすることでグラフを大きく見せることができます。これは簡単で効果の大きいテクニックです。 また、グラフのタイトルは下側に移動しています。論文誌によって異なりますが、表のタイトルは上側に、グラフのタイトルは下側にするのが多いと感じます。 とりあえず、ここまでで最低の最低限のところまでは来ました。あなたの仕事内容をよく知っている、直属の上司や同僚に対して速やかに結果の報告を行う場合にはまず十分です。
しかし、あまり現場をしらない、マネージャーや役員等への報告、または学会等の外部での発表を考えると、これではまだ不十分です。ここでもう一工夫することでより効果的な報告ができるようになります。

②色使いとプロット

報告資料の作り方で一般には「色分けして見やすくしよう」と言ったアドバイスが教えられていたりします。確かに色分けすることが効果的な時もあるでしょう。しかし、今、我々は芸術作品を作っているわけではありません。 今は仕事の成果を相手に報告することが求められています。その際には、正確に、速く情報を伝えることが重要です。 色分けで注意が必要なのは、世の中には色の見分けがつかない「色盲」というハンディキャップのある方がいることです。人種や性別によって人口に対する割合は変わりますが、例えば日本人の男性の場合、人口の5%は色盲の方です。20人に1人の割合でいらっしゃるわけで、相当な割合と言えます。 色盲は典型的な例であれば緑と赤の見分けがつきません。例えばグラフのプロットを赤と緑で分けて作ってしまうと理解できません。 あなたはどんな相手にも正確に情報を伝えねばなりません。となると、確実なのは色によってプロットを区別するのではなく、形状によってプロットを区別することです。
形状によって区別した例
形状によって区別することで、誰にでも理解できるグラフとなります。今回はプロット同士を線でつなぐことも追加しました。 形状によって、区別することの利点は他にもあります。 上の図中に赤矢印で示した場所は、測定値が同じでプロットが重なっています。このような場合でもプロットの形状を分けることで見やすくできます。 また、論文投稿した記事が冊子となる際に、モノクロで掲載されることも多くあります。このような時もプロットの形状で分けておかないと、読者からグラフが読み取れなくなります。 あるいは、自分の資料をコピーして配布する際に、モノクロコピーでも相手に理解してもらえる、と言うこともあります。 プロットの形状さえ分けておけば、色分けをしてもかまわないのですが、色分けすることで相手に何が伝わるのか、読者にとってどんな利点があるのか、を考えておきましょう。単に見た目をきれいにすることは技術系文書の読者は望んでいません。意味がある色分けをしましょう。

③グラフに図を張りこむ

プロットの形状まで修正すれば、及第点と言えます。さらに使えるテクニックとして「グラフの中に説明図を入れ込む」というのも効果的です。
左上の余った個所に、実験装置の図を入れ込みました。こうすれば、このグラフがどういう実験によって得られた結果か、一目瞭然となります。これは特にあなたの仕事内容をよく知らない人、マネージャーや役員、あるいは学会等の外部発表において有効でしょう。 さらに凡例を具体的な写真やイラストで示す、ということもできます。やりすぎは良くないですが、このようにグラフの中に図を貼りこむことで伝えることのできる内容は増やせます。
日常のレポートにおいては、ここまで作りこんだグラフは必要ではないかもしれません。しかしプレゼン資料においては限られたスペースで分かりやすく伝えることを考えると、このような作りこみが有効です。 また報告書においてもスペースが限られている場合は、複数の図を1枚のグラフの中に入れ込むことで場所を有効に使うことができます。

④プロットを線でつなぐのは考えてから

上記の例では、プロットを線でつないだグラフとしました。ふだんあまり意識していないかもしれませんが、プロットを線でつないでいい時と悪い時があります。 対象としている実験データが連続的なデータと言える場合は、線でつないでもOKです。何らかの関係式が縦軸と横軸のパラメータの間に想定され、実験点の間を内挿していると考える場合です。 しかし、データの間にそのような関係性が考えられず離散的なデータの場合は、線でつなぐのは妥当ではないです。 例えば、「地球上の標高」と「気温」の関係は、プロットを線でつないでも良いでしょう。しかし、「地球上の標高」と「緯度・経度」の関係は線でつなぐ意味がないでしょう。

④+1 手書きでよいから実験中・作業中にグラフや図表でまとめよう。

以上で、グラフの書き方のポイントは終わりなのですが、もう一つ大事なことがあります。

それは手書きでも良いから実験中や作業中に実験結果をグラフ化することです。

実験を全て終えてからグラフを書くのではなく、実験をやりながら結果をすぐにグラフにしてみてください。グラフにすることで自分でも気づいていなかった傾向や、詳しく調べてみたい箇所、取り忘れていたデータ等に速く気づくことができます。 これが、実験を終えて片付けてしまった後だと再度実験を行うのは手間がかかります。
難しい実験の場合は2度と条件がそろわず再現できないかもしれません。

お疲れさまでした

以上で説明を終わります。 先にも書いたように、グラフを制する者は報告を制する、と言うことで分かりやすいグラフを書ければずいぶんと楽ができます。また実験中にグラフを書くことを実践すれば、作業の効率もおおきく改善できます。 ぜひ参考にして実践してみてくださいね。