4冊まとめて書評:尾原和啓 モチベーション革命、どこでも誰とでも働ける、他

どれもkindle unlimitedで読める4冊

尾原和啓氏は、マッキンゼー、NTT、google、リクルート、楽天など12社を転職で渡り歩いたコンサルタントであり、IT評論家です。

尾原氏は何冊か本を書いているのだが、今はamazonのkindle unlimitedにていずれも読めるようになっています。今回は

  • モチベーション革命
  • どこでも誰とでも働ける
  • ITビジネスの原理
  • ザ・プラットフォーム

の順で4冊読んだので気になったところを紹介します。

モチベーション革命

モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書 (NewsPicks Book)

副題は、「稼ぐために働きたくない世代の解体書」。この副題に心惹かれて読みました。

現代の若者について、経済成長期を経験した「乾いている世代」に対して「乾けない世代」として定義します。

世の中にモノやサービスがなく、物質や名誉といった欲望に乾いていた「上の世代」に対して、便利なモノやサービスに囲まれ恵まれて育った現代の若者世代。

新しい世代「乾けない世代」だからこそ目指すべき生き方や可能性について語っています。

「呪い」を解く

印象的だったところをかいつまんで紹介します。まず一点目。

自分の「好き」を貫く時のお邪魔虫。それは、今の日本人にかけられた「迷惑をかけちゃいけません」という”呪い”です。 ほとんどの日本人は、小さいころから両親や学校の先生にそう言われて育ってきました。そんな人々にとって、誰かに迷惑をかけることは「悪」です。だから、常に「他人から見てどうか(迷惑になっていないか)」を気にして生きている。やがて他人の目線や他人の評価軸を取り込むことに慣れ切った人々は、何か行動を起こすときも、自分がどうしたいかより、他人から見てどうか、他人に迷惑をかけないかを一番に気にしてしまいます。

自分自身が、「乾けない世代」に含まれるか微妙な年齢なんですが、最近は自分自身が今後どう生きていきたいのか、どう生きていけるのか、悩むことも多いです。

思えば子供のころから、就職して働くまで、私自身は他人の目線や評価をすごく気にして生きてきたと感じています。その中で、ルソー「エミール」などに出会い、自分の良心に従っていきる勇気をもらったりしました。わたしはやはりこういうフレーズに心惹かれます。

私を支えてくれた、ルソーと「エミール」 ルソーは大好きな思想家です。と言っても読んだことがあるのは「孤独な散歩者の夢...
もし誰かにちょっと迷惑をかけてしまったら、そのぶん「ありがとう」と言ってもらえる行動を起こしましょう。そして誰かに「ごめんなさい」と言われたら「おたがいさま」と言って、迷惑を受け止めてあげられる笑顔を見せましょう。

この引用部はすごく素敵だと思います。迷惑はすすんでかけるべきではないだろうけど、もしも迷惑をかけたとしたら、そこからでも取り返せるんだと。

「ありがとう」と言ってもらえるようなことをやっていこう。そして他人に対しては寛容でありたい。ここは心が動かされた部分です。

自分の色を見つける

自分にとって”誰が好きといってくれるか分からない色”でも、誰かが「好き」と言ってくれる、あなただけの色をどんどん人に提供していきましょう。やがて持続的に人から「ありがとう」と言ってもらえる自分だけの「好き」が見つかります。

尾原氏は、この本を通じてこれからの社会を切り開くエネルギーは物事への”偏愛”であると語っています。自分なりの視点でのこだわり、「好き」という思いを大切に生きていきたい。自分の内なる良心に従っていきたいと私も思うのです。

自立とは、依存先を増やすこと

よって、自分が依存する先が一カ所しかないと、その一カ所がつぶれたときに路頭に迷うことになってしまう。変化する時代を自由に、自立して生きていくことは、何にも依存しないことではありません。むしろ依存先を一カ所にしぼらず複数持つことが大事です。

でかけるときだって、自動車でもいい、バスでもよい電車でもよい自転車でもよい、と手段は多いほうが安定なんです。人生においても、一つにしがみついてしまうのは危険です。

例えば会社にしがみつくというのはその典型でしょう。変化が大きく速い現代において、一つの手段に依存するのはやめておいたほうがよい。ここは心から同意できる部分です。

どこでも誰とでも働ける

どこでも誰とでも働ける――12の会社で学んだ“これから”の仕事と転職のルール

12回の転職を繰り返して生きてきた尾原氏による、これからの働き方の提案です。

ずっと学び、ずっと働きながら、自分の趣味を全うする、しかも変化する時代の中で、つねに自分も変化し続けることが求められるようになります。
  1. どんな職場で働いたとしても、周囲から評価される人材になる
  2. 世界中のどこでも、好きな場所にいながら、気の合う人と巡り会って働ける

こんな働き方が「どこでも誰とでも働ける」生き方として提案されています。しかも理想としてではなく、このさきの時代を生き抜くための現実的な手法としてです。

仕事の原則は失敗を前提としたDCPA

自分からギブすることに加えて、ぼくが12回の転職を通じて身につけたインターネット時代にふさわしい働き方とは、頭でっかちになるよりも、まず行動したほうがたいてい勝つということです。あれこれ悩んでいるヒマがあったら、とにかく動いたほうが、結果的に速く正解にたどり着く。トライ&エラーで、失敗してもすぐにやり方を見直して、再度トライすればいいわけです。

「まず行動したほうがたいてい勝つ」をモットーに従来言われていたPDCAサイクルでは、Planに時間がかかりすぎるから負けてしまう、DCDCDCDC….でとにかくまず行動しろ、と述べています。

私も装置開発の仕事をするうえで、まず行動することが大事だと考えます。あれこれ悩んだり検討するよりまずやってみる。

やってダメならその時点で結果がわかるわけで、次の方法を試すことができるわけです。悩んでいるならさっさとやって失敗したほうが絶対に得だし前に進むのです。

「プロフェッショナル」の覚悟

 さらにもう一つ、ぼくがいまの時代に合わせてプロフェッショナルの条件を付け加えるなら、自分の名前で生きる勇気をもつ、ということです。
 会社に依存しすぎず自由になるということは、(実際に転職するかどうかにかかわらず)いまいる会社のブランドや肩書に頼って仕事ができる環境をどこかで手放し、自分の名前でいきていく覚悟をするということです。
 自分の名前で生きていこうとすれば、自然と「自分とは何者か」「何ができて、何ができないのか」をプロフェス(公言)することになります。

これも重要な心構えだと思います。○○会社の自分、○○部、○○課の自分でなく、何も肩書の無い素の自分で勝負できるようになっているか。これは別に独立しろというわけではないのです。

別の個所に書かれていますが、そうやって会社に対しても自立したような人間でなければ組織を変えることなんてできない。辞める覚悟をもって、それでも辞めることを選ばずに残る人。そういった人でなければならないのです。

AI時代において、「人間」に求められること

(前略)AI以降に人間に求められるのは、何が世の中の問題となっているのか、解決すべき課題は何かを発見する能力だと考えています。
 すでに認識されている課題を解決する部分は、どんどんAIが代行していくはずです。しかし、「会社のここが問題だ」「この部分がボトルネックになって、社会の発展を妨げている」という部分を見つけるのは、人間にしかできません。AIには「生きる」「生き残る」とう目的もなければ「よりよく生きたい」という願望もないからです。

生きているのは俺たち人間だ。「生きる」という行為とそれにくっついてくる実存的な問題を、生きる意味とか生きがいとかは絶対にAIには任せられない。

だってAIは人間の生を生きていないから。だからこれからは人間の人間らしさの本質を各自突き詰めることが必要になると。そのために、AIには人をよりヒューマナイズしてもらうんだ。

ところで、そういった人間らしさを扱ってきた学問があります。それは哲学。
これからの時代、また新たに哲学が人を支えるために重要となるでしょう。

ITビジネスの原理

ITビジネスの原理

docomoのiモードや、転職サイト等のITビジネスにおけるプラットフォーム構築に多くの経験がある尾原氏の、ITビジネスの紹介本。

日常生活を「ヒューマナイズする」という発想

この中でGoogleのGoogle グラスが紹介されています。googleグラスはウェアラブルなディスプレイデバイスで、使用者が何を見ているかを認識し、その意図をくみ取り必要な情報を表示してくれるデバイスです。

例えば、空を見ていれば天気予報を教えてくれる、時計を見れば今日の予定を表示するなど。

googleがgoogleグラスの着用者の1日を想定して作成したPVに沿って尾原氏が解説しています。

その中で尾原氏が着目している場面があります。PVの主人公が、友人との待ち合わせ場所に移動しようとしたとき、当初使おうと思っていた地下鉄が事故で不通になっています。そこでgoogleグラスは、代替ルートを探すか、徒歩か、バスかと聞いてきます。

PVでは徒歩ルートを選択してそれにナビゲートされて移動していきます。このとき、普段使い慣れた交通手段が使えないと代わりの交通手段で目的地に向かうのはストレスのかかるものです。

ところが動画の主人公はgoogleグラスがナビゲートしてくれるので、目的地にたどり着くための心配はいらない。だから途中で見つけた楽器店で前から始めようと思っていたウクレレを買うこともできるし、たまたま出会った犬の頭をなでることだってできる。

Googleグラスは、情報取得のコストや不安を取り除くことで、人がより人間的な生活を送れるようにしてくれます。つまり、日常生活をヒューマナイズするテクノロジーなのです。

「日常生活をヒューマナイズする」。これはとても共感できる思想です。我が意を得たりというくらいです。

これは、Googleもそうですが、最近流行りの車の自動運転に対してずっと感じていた思いです。

運転てなんて無駄なんだろうって思っていました。

人間や荷物が移動するという、たったそれだけのために、他にいろんなことができる人間が何時間も集中力を割いてハンドルを握っていなきゃいけないのって、すごいもったいないことじゃないかと思っています。そこを開放されることで人の可能性ってもっと広がると思います。

仕事でもそうで、他人にもできる仕事はどんどん他人にお願いしていく。そうして自分にしかできないことは何かを問い、それにフォーカスする。

さらに今は自分にしかできないことも、一般化して誰にでもできるような技術にしなければならない。だって新しいことができなくなっちゃうから。

ザ・プラットフォーム:IT企業はなぜ世界を変えるのか

ザ・プラットフォーム:IT企業はなぜ世界を変えるのか?

おなじく、プラットフォームビジネスについての解説。

「ディープオプティミスティック」という態度

前略)プラットフォームはときには混乱を生み出し、さまざまな問題を引き起こすかもしれませんが、その一方で世界や社会をよりよい方向へ変える可能性を秘めています。プラットフォームが人々の利便性を高めて、よりよい生活や暮らしに変えていくことができるのならば、短期的には一つひとつの問題や課題に対処しながら、長期的にはその可能性を信じて向き合う方が圧倒的に得なのです。

眼の前の問題点は認識し、克服するために対策せねばならないとしても、根底深くには技術を信じる楽観的な態度を取る、ディープオプティミスティックという思想が紹介されています。

何かをやろうと思ったとき、どんなことでもディープオプティミスティックでうまくいくんじゃないないだろうか。それこそ、人生生きていくにあたってはディープオプティミスティックじゃなければやってられないでしょう。

「あなたVSわたし」ではなく、「あなたと私VS目的と課題」

前略)人はお互いが見えない不安から「あなたvsわたし」という対立の構図になりやすいものです。そうではなくて「あなたと私vs目的と課題」という構図でつねにありたいと私は思うわけです。

だれかと何かを議論するとき、相手と自分の意見が一致しないとき、つい自分を否定されたように感じてしまうときがあるものです。

でもあなたと私はいつだって敵じゃない。共通の問題や課題を解決する同士なんだと思えれば建設的な議論にすることができる。身のまわりにいるのは自分の敵じゃなく、みんな仲間なんだと。

まとめ読みして思ったこと

フラットな自分でいること。

肩書や社名に頼らない、自分の名前で生きることについては、著作内でも触れられていますが、尾原氏自身がそういった”フラットな自分でいること”を実践されているのはよく伝わりました。

むしろ、「モチベーション革命」を読んだ時点では尾原氏のことを全く知らなかったので、この人は誰なんだか読んでも全然わかりませんでした。

途中でgoogleで調べてしまいましたが、これは読む方の姿勢としてもフラットな姿勢が求められるということかと思いました。つまり、マッキンゼーやgoogle、楽天といった経歴や役員といった肩書でなく、純粋に何を語っているかで内容を判断できるか、ということです。

誰が語っているかではなく、何を語っているかを自分は見極められるだろうか、と。

どれも他人のアイデアの話だというところ

あとがきではいつも、「この本に書かれていることは自分のアイデアではない、人から伝え聞いたことを自分なりに咀嚼した結果であってオリジナルじゃない」と書かれています。

でもそうやって伝え聞いたアイデア同士をつなげて一つの体系として構築し著作とするのは、氏のオリジナルな能力によるところでしょう。

実際、氏の活動においては人と人とを紹介して結びつけるという縁結びの活動もよく行われているようですが、アイデアを結びつけることも同じ土俵のことなんでしょう。きっと。

おすすめは「」

何を求めるかによりますが、私としては「どこでも誰とでも働ける」がおすすめです。私の今の問題意識に対してよくマッチしたということです。今回のレビューが参考になれば、みなさんも気に入った本を手にとってみてください。