横山宏のマシーネンクリーガー展@八王子夢美術館を見に行った

スネークアイがデザインされたチケット。カッコいい。

なんと、こんな素晴らしい展示会が、職場から徒歩圏内で開かれるとは感激である。そう、八王子夢美術館で2019年7月13日から、9月1日まで開催の「横山宏のマシーネンクリーガー展」である。

仕事が夏休みに入ったので、早速行ってきた。

至福の空間

館内には、横山氏のオリジナル作品がたくさん展示してある。実物を見ると本物の迫力、オーラを感じる。何度も塗り重ねて重厚になった塗装表現、筆の運びの一つ一つから、横山氏の息づかいまで感じ取れそうで、クラクラとする。

写真撮影もOK。一昔前は美術館で写真撮影なんて御法度だったイメージだが、最近は寛容なのか。

私はシュトラール軍の無人兵器が好きだ。特に陸戦ガンス。頭?の下の装甲板がたまらない。装備がロケット砲なのもイカすぜ。このタイプは、オリーブ系の明細に、オレンジのマーキングが最高。氏の作品は、仕上げはマットではなくセミグロスからグロスに近い感じだと実物を見て改めて気づいた。グロスで塗ってカッコいいと言うあたり、塗装術を感じる。

陸戦ガンス

嗚呼、こちらの陸戦ガンスもたまらない。この白の認識帯、この刷毛目が残っている感じがセクシーだ。

陸戦ガンスその2

あと実物を見たかったのが、このシェンケル。MaKモデリングブックに、塗装の様子が載っていて、すごいなぁと思っていた作品だ。感無量である。この半ツヤの感じが実に素晴らしい。樹脂材料ではなく、鉄の重みを感じる。

立体物以外に、会場には横山氏のイラストが大型パネルに印刷されて多数展示されていた。これがまた良い。模型が素晴らしいのは分かっていたけど、イラストの表現、空気感に圧倒される。特に写真のラプターは、見た瞬間思わず息を飲んだ。私の拙い写真では伝わらないのでぜひ実物を見ていただきたい。

マシーネン以外にも、横山氏の手がけた作品が多数展示されている。特に私が気になったのは、B-CLUBで連載されていたと言う「竜の時代」の作品。

こんなすばらしい作品を間近でじっくりと見られるなんて、ありがたいことである。

横山氏の作品を見て改めて感じたのは、好きこそものの上手なれ、という言葉である。行使の残した言葉を編纂した中国の古典、論語には次の一節がある。

子の曰く、これを知る者はこれを好む者に如かず。
(これを好む者はこれを楽しむ者に如かず。)

論語 金谷治 訳 岩波文庫

物事を知っている人は、その物事を好き好んで行なっている人には敵わない、という意味である。横山氏の作品からは、模型とイラストの創作への愛が溢れている。模型やイラストが好きだというその気持ちが、作品からもヒシヒシと感じられるのである。

横山氏のインタビューが新聞記事に載っていたのを友人から見せてもらった。それによれば、「好きなことがそのまま仕事になり、模型の依存症でよかったと本気で思います。これがギャンブルや酒の依存症だったら人生が破綻していたでしょう。」との事である。まさしく、これを好む者に如かず、の世界と言える。

私は、模型は作らなくなって随分経ってしまった。まだまだ子供も小さいし、家の中に作業場所が確保できそうもないことを考えると復帰は難しいと思っている。だけど、大事なのは模型に限らず、自分が好きと思えることを見つけて、自分の世界を表現していくことだと思っている。だから、その何よりのお手本として、展示会にて横山氏の作品群を鑑賞できたことはこの上ない刺激となったのだ。こんな素晴らしい展示会を企画してくれた、八王子夢美術館にも感謝したい。ありがとう!!

ところで新聞記事を見せてくれた友人。美大出身なのだが、横山氏の作風を見て日本画の技法や画材、岩絵具、膠の影響を受けていることをすぐに見抜いていた。たしかに横山氏は武蔵野美術大に在学していた時は日本画を学んでいるのだ。そして、著書の中でも岩絵具なんかの使い方については触れていたりする。作風から日本画の影響を見て取る、というのはわたしには全然わからない話なのだが、やはり専門家の目というのは一般人とは違う分解能を持つようである、といたく感心した。

ちなみに、岩絵具についての記述があるのは、下に示す「MaKモデリングブック」である。これはとても素晴らしい本。特に塗装についての考え方は目からウロコである。塗装には失敗は無く、何度でも塗り重ねていけば良い、塗り重ねれば重ねるほど、プラスチック素材の素材感が抜けて、塗装面の情報量が増えるから。二次元のイラストを立体的にカッコよく見せるのはテクニックと苦労が必要だが、模型なら最初から立体だからハードルが低い。など。あたかも立体物である模型をキャンバスに絵画を描く、と言った横山氏の作風に衝撃を受けた一冊である。