経営者にこそ生成AI
指示を待つだけの存在
今の生成AIは、どれだけすごい能力を持っていても、結局のところ「指示待ち」の存在です。いくら優れたAIでも、自分から「0から1」を生み出すことはできません。私たちが何かを指示すると、それに応えてくれるだけで、自分で目標を立てて行動することはできないのです。
意思ある人間にこそ価値を発揮する道具
こんな特徴を持つ生成AIは、自分の意思で行動できる人にこそ、本当の価値を発揮します。はっきりとしたビジョンを持ち、それに向かって進む人が、AIという道具を手に取ったとき、その可能性はぐんと広がります。
日本の小規模企業における生成AI活用の現状と可能性
活用の遅れとその背景
日本では、会社の規模が小さくなるほど生成AIの活用が遅れているようです。図1に「企業の生成AI導入・利用率(従業員規模別)」を示します。

この調査の結果からも、従業員規模が少なくなるほど、生成AIの活用度合いが低下することが明らかとなっています。
この現象には主に二つの理由が考えられます。
一つ目は、小さな会社ほど「DX化」全般が進んでいないという傾向があること。生成AIもデジタル化の一部と考えると、この全体的な遅れの影響を受けているようです。デジタル技術を使いこなすための知識や人材、投資する余裕が足りないことが背景にあるのかもしれません。
二つ目は、小さな会社ほど間接業務や管理業務が少なく、現場での直接的な仕事が中心になっている傾向があること。今の生成AIが特に力を発揮するのは、文書作成やデータ分析などの知的作業が中心の間接業務です。そのため、こういった業務が少ない小さな会社では、生成AIを導入するメリットが小さく感じられてしまうという面もあります。
小規模企業こそAIの恩恵を受けられる可能性
でも、こういった見方は大きな誤解を招くかもしれません。実は、小さな会社こそが生成AIの恩恵をたっぷり受けられる可能性を秘めているのです。
小さな会社の最大の特徴は、リーダーの能力や決断が会社全体にすぐに影響するという点です。大きな会社では意思決定から実行までに何段階もの手続きが必要ですが、小さな会社ではトップの判断がそのまま組織の動きにつながります。
生成AIというパワフルなツールを経営者自身が使いこなすことで、次のような変化が期待できます:
- リソースの限界を超える: 人材や資金が限られている小さな会社でも、AIを活用することで大企業に負けない質の高い成果を生み出せるようになります。
- 意思決定の質が上がる: 経営者がAIを使って市場分析や戦略立案を行うことで、様々な角度からの意思決定ができるようになります。
- スピードアップ: 小さな会社の機動力にAIの処理速度が加わると、市場の変化への対応がぐんと速くなります。
- 他社との違いを作る: 同じ業界の他社より先にAIを活用すること自体が、小さな会社の強みになります。
つまり、小さな会社の経営者こそが、生成AIを使って事業を大きく伸ばせる時代が来ているのです。経営者自身の能力を拡張するツールとしてAIを捉え、自分のビジョンと責任感を持って活用することで、会社の規模に関係なく大きな成長が可能になるでしょう。
責任を持てない存在としてのAI
生成AIは意思を持たないので、自分の出した答えに責任を取ることもできません。これは哲学でいう「自由意志と責任の問題」に関わる話です。
自由意志と責任の哲学的考察
哲学の歴史の中で、自由意志と責任の関係はいつも重要なテーマでした。カントは『実践理性批判』で、道徳的な責任を負うためには自由意志が必要だと説きました。彼の考えでは、「~すべきである」というのは「~できる」ということを前提としており、道徳的な義務は自由意志があってこそ成り立つものなのです。
サルトルは「人間は自由の刑に処せられている」という印象的な言葉で、自由と責任が切っても切れない関係にあることを指摘しました。彼の実存主義哲学では、人間はいつも選択を迫られており、その選択には全面的な責任が伴うと考えられています。
これらの哲学的な議論から見えてくるのは、本当の責任が生まれるためには自由意志が必要だという共通理解です。選ぶ自由がなければ、その結果に対する道徳的な責任も生まれないのです。
AIには自由意志がないので、AIが出した答えに対する責任は、それを使う人の側にあります。これは大切なポイントです。AIを使って何かを作るとき、その結果に責任を持てる人でなければ、この技術を適切に扱うことはできないでしょう。
経営者の資質との一致
「自分の意思を持ち、自分の行動に責任を持つ」—これはまさに経営者に求められる資質ですよね。経営者ははっきりとしたビジョンを持ち、決断を下し、その結果に責任を負います。この点で、生成AIは経営者という立場にとても合っているのです。
生成AIは経営者の能力を広げ、彼らのビジョンを形にするための強力な道具になります。経営者が持つ方向性と目的意識、そして責任感が、AIというたくさんの可能性を秘めた道具を上手に導き、活用することができるのです。
孤独な意思決定者の心強い味方に
経営者はとかく孤独な意思決定者になりがちです。重要な判断をするとき、最終的な決断は自分自身の肩にかかっています。生成AIはこの孤独な旅のよき伴走者になってくれるでしょう。
アイデアを整理したり、市場を分析したり、戦略を立てたり、コミュニケーション方法を考えたり、様々な場面で経営者の思考を助け、サポートしてくれます。AIは疲れを知らず、膨大な情報を処理し、新しい視点を提供してくれるのです。
特に小さな会社の経営者にとって、社内で十分に意見交換できる相手がいないことも少なくありません。生成AIは経営者の考えを整理し、様々な角度からの質問や意見を提供することで、より深い思考と気づきを促してくれる相談相手になるでしょう。
結論:二人三脚で切り拓く未来
生成AIと経営者の関係は、単なる「道具と使い手」を超えた、お互いを高め合うパートナーシップになる可能性を秘めています。自分の意思で動き、責任を引き受ける経営者だからこそ、生成AIという強力な道具を最大限に活かすことができるのです。
これからの時代、生成AIを上手に活用できる経営者とそうでない経営者の差は、どんどん広がっていくでしょう。特に小さな会社では、経営者自身がAIの可能性を理解し、自分のビジョンに沿ってAIを活用することが、大きな競争力につながります。意思と責任を持つリーダーこそが、この新しい技術革命の真の勝者になるのです。