神林長平「ぼくの、マシン」の世界を実現するchromebook

いま集合的無意識を、 (ハヤカワ文庫JA)
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「ぼくの、マシン」とchrome book

「ぼくの、マシン」に神林長平の見た未来はchrome bookで実現されつつある。

「ネットワ ークに接続しなくてはコンピュ ータはコンピュ ータとして機能しなくなってきた 、という点だ 。おれにとってのコンピュ ータというのは 、パ ーソナルなもの 、おれだけのものであるべきだった 。ネットワ ークから切り離したいのに 、そうすると 、コンピュ ータはコンピュ ータでなくなってしまうんだ 。最高性能が発揮できない 。おおいなる矛盾だと思わないか 」

神林長平「ぼくの、マシン」


「ぼくの、マシン」は神林長平の書いたSF小説、戦闘妖精雪風のスピンオフ作品である。短編集、「いま集合的無意識を、」に収録されている。

人類は謎の異星体ジャムと存亡をかけた戦争中。主人公の深井零は、ジャムとの戦いのために組織されたフェアリィ空軍の戦闘機パイロットだ。零は戦闘中にトラウマを負いそれを軍医からカウンセリングを受けている。本作品ではそのカウンセリングの場面が描かれている。

カウンセリングにおいて心理医は、零の幼少期を探る。

題名となっている「ぼくの、マシン」とは幼少期の零が望んだ「パーソナルなコンピュータ」の事である。

「ぼくのマシン」で零が幼少期を過ごした日本は全体主義国家であり、国民が所有できるコンピュータはネットワークに接続するためのターミナルに過ぎず、OSはクラウド上で動作し、処理はネットワーク上の不特定多数の機械で分散処理される。

零はこの状況が許せなかった。自分だけのパーソナルな空間が欲しい。今の端末ではまるで自分のバスルームに他人が入ってきて用を足しているようなものだ、と。

そこで零は小学生ながらシステムをクラックし、独自のOSを開発し「パーソナルなコンピュータ」を手に入れようとするが…

その結末は実際に読んで確かめて頂きたい。後に特殊戦のブーメラン戦士として、人よりも愛機である電子偵察機、雪風に絶対の信頼を置く零の、ルーツが垣間見える作品だ。戦闘妖精雪風シリーズのファンなら一読の価値有りである。

ところで最近知ったコンピュータにchromebookと言うものがある。これが零の世界のコンピュータにかなり近い存在だ。OSはChromeOSと言うもので基本的にウェブブラウザーのchromeを動作させることに特化している。

基本ネットに接続してchromeを立ち上げ、アプリケーションはローカルコンピュータではなくウェブアプリケーションとしてクラウド上で動作させる。

そのため、ハードウェア的にはメモリーもCPUも低性能なもので十分。ストレージにしてもクラウドに保存することを前提に小容量となっている。その分本体価格を下げて提供できるのがメリットだ。

chromebook自体はウェブに接続するための一端末に過ぎない。これってまさに、神林長平が「ぼくのマシン」で描いた世界が具現化しておるのだなって思った。

で、小説中では端末は国家により管理されている設定であったが、現実はどうだろうか。chrome bookであればGoogleという一民間企業に委ねられている。これはいい事か悪い事か分からない。Googleも営利を追求する一企業に過ぎないのだ。

iPhoneとiPadを所有していて、ブラウザはchrome、買い物はAmazonのGAFAどっぷりの自分が言うのもなんですが。依存しすぎるのも考えものだ。

戦闘妖精・雪風の続編(最新作)

ところで戦闘妖精雪風 アンブロークンアローの続編はいつになったら読めるだろうか。誰か知りませんか。

2019年9月22日 追記:SFマガジン2020年2月号 2019年12月25日発売 から連載開始だそうです!やったー!