イカのお寿司と”正しく見る”こと

粘土のお寿司

上の写真は次女が油粘土で作ったお寿司である。エビやマグロなどのいろいろなネタに混じった右上の「しょうゆ」が結構いい味出していて好きだ。ところで、左上の細かく切れ目が入ったお寿司はなんだろうか?エンガワかと思ったが、子供にしてはちょっと渋いお寿司だし、次女が好んで食べているイメージもない。次女に聞いてみたところ左上のお寿司はイカだそうだ。私は左下の十字に飾り包丁(?)らしきものが入っているネタがイカなのかと思っていたのだが、実はこれは期間限定の「牛カルビ」なのだそうだ。

確かに、我が家でよく行く「くら寿司」のイカはかなり細かく包丁が入っていて言われてみれば、次女の作った粘土のお寿司と瓜二つである。私の頭の中で理想化されたイカのお寿司とはちょっと違うのだが、次女は自分の目で見たくら寿司のイカの握りを忠実に再現していたのである。私がイカのお寿司を粘土でこしらえようと思った時、果たしてどんな形で作るだろうか?くら寿司のイカのお寿司がどんな形だったか、覚えているだろうか?私はイカのお寿司は大体こんな感じ、という今までに人生で作り上げたイメージをもとにして、ろくに回っているお寿司の形も見ていなかったのではないだろうか。

氷は水になぜ浮かぶのか?

長女の今年の夏休みの自由研究の題材は、「氷は水になぜ浮くのか」というものだった。私は「水が凍ると体積が増えて、重量は増えないけど嵩が増すので、密度が低くなって水に浮く」という予備知識を踏まえて実験の指導を行った。あらかじめ水の重量を測って、凍らせたあと再度重量を確認し、重量に変化ないことをチェック。続いて外寸をはかり、嵩が増えていることを確認もした。さて、小学生に密度と浮力の関係をいかに教えたら良いか、とこちらも思案していたのだが、長女は自分の目でしっかり観察して、次のような仮説を提出した。

「氷の中に気泡がたくさんできているから、氷は水に浮くんじゃないか、浮き輪も空気が入っている方が浮くわけだし。」

私は密度と浮力の予備知識にすっかりとらわれていて、氷の中にできた気泡のことなど目にも止まっていなかったし、それを氷が水に浮く理由の一つとして検討することもしていなかった。しかし、長女の指摘はあながち間違っているとも言い切れないわけである。

イカのお寿司の件に続き、ここでも自分は頭の中に作り上げた概念の世界に生きていて目の前の物事をそのまま観察することができていないことに気づかされたのだった。

曇りなき目で見る

子供たちに教えられたこと。物事をフラットに曇りなき目で見ること。自分がこの世界に生きているヒトである以上、まったくの「ありのまま」に物事を見ることなんてできなくて、なんらかの価値判断をもとに世界を切り取って見るしかないのだけれども、それでも子供たちの、いまだ”曇りを知らない目”の解像度の高さに驚かされた体験だった。