読書感想:知的生産の技術 梅棹忠夫

知的生産の技術 (岩波新書) 生態学者、民俗学者である梅棹忠夫の情報整理、発想法の技術論。ベストセラーとなった本である。初版は1969年。当ブログでも紹介している、思考の整理学にも一脈通じる所あり。
大阪桐蔭高校出身で中日ドラゴンズ ドラフト1位の根尾昂選手の愛読書としても有名。思考法に関する名著。自力で飛べないグライダー人間では、コンピューターに存在価値を奪われる という指摘はAI時代を迎えた現代人にも深く突き刺さる言葉だ。
ノートの取り方から、カードを使って情報整理する方法は、現代の目線から見れば古臭くアナログな方法かもしれない。 しかし、人の脳みその構造は今も昔もたいして変わっていない。現代には昔に無かったパソコン、スマートフォン、インターネットがある。「知的生産の技術」で述べられている発想法のエッセンスは現代に生きる我々にも大きな示唆を与えてくれるだろう。 例えば、evernoteやonenoteと言ったノートアプリを梅棹先生はどんな風につかいこなしたろうか。またタスク管理ツールのtrelloもカード型の情報整理システムと捉えられる。あのサービスも使いようによっては発想を得るためのツールになるかもしれない。 読んでいて参考になったのは、「小ざね法」という、頭の中にある思考や発想を整理しアウトプットするための方法。 思いついた言葉を小さなカード「こざね」にどんどん書いていき、関連するキーワードどうしを繋げてホッチキスでとじてかたまりを作っていく。まず、ばらばらにキーワードを取り出しそれをまとめていく手法だがうまい方法だと思う。

漢字つかいすぎてない?

途中、日本語の表記法に関しての意見が述べられている。漢字かな交じりの表記ではなく、ローマ字表記にするべき、とかカタカナタイプライター、平仮名タイプライターの利用などが提案されている。当時は日本人向けの新しい言語や表記システムの考案が盛んに行われていたらしい。 梅棹先生はなるべく平仮名ですむものは平仮名で表記するように心がけており、本書もとても平仮名が多い。本記事内に、原文からの引用箇所があるが、それを見れば感じとってもらえるだろう。 それは読みやすさ、わかりやすさを重視しての表記である。今は、PCやスマートフォンからの文字入力が簡単に行えるようになり、難しい漢字や言い回しなどを使えるようになった。 だけれども、不必要なまでに漢字が使われている文章になっており読みやすさを損なっていないか。自分の文章を振り返り、気を付けていきたいと思った。

「引用」は少なく

また、情報を生産するという観点で他人の著書の「引用」をどうとらえるか、という点は考えさせられる。
たくさん本をよんで、それから縦横に引用してなにかをのべる。いかにも学問的で、けんらんとしているようにみえるが、じつはあまり生産的なやりかたとはおもえない。わたしのやりかたでいけば、本はなにかを「いうためによむ」のではなくて、むしろ「いわないためによむ」のである。つまりどこかの本にかいてあることなら、それはすでに、だれかがかんがえておいてくれたことであるから、わたしがまたおなじことをくりかえす必要はない、というわけだ。 (中略) 
むしろ一般論としては、引用のおおいことのほうが、はずかしいことなのだ。それだけ他人の言説にたよっているわけで、自分の創造にかかわる部分がすくないということになるからだ。

私自身は、けっこう権威主義的なところがあって、何かと引用したくなるのだけど、ちょっと反省させられる。ブログならSEO的にも引用が多いのは良くないし、他人がすでに言っていることを繰り返してもオリジナリティないよな。 そういえば、上野千鶴子さんの「情報生産者になる」にも、引用する場合は、ポイントを絞って1回のみにしろ、と書いてあったことを思い出す。そして上野さんは「知的生産の技術」を愛読書とされていた方だ。なるほどここに原点があったのかな。
「ひとが答えのない問いに立ち向かうための、だれにでもわかり、どこでも通用するノウハウです。」 社会学者の上野千鶴子による、価値のある情報を生産するための方法論。研究者時代の自身の経験や東大や立教大などでのゼミでの指導方法論などをまとめた一冊。

まとめ

最初にも述べたが、具体的な方法自体は若干レトロなおもむきがある。しかしそのエッセンスの輝きは失われていない。本書のまとめでは、つぎのように述べられている。
このシステムは、ただし、まったくの未完成のシステムである。社会的・文化的条件は、これからまだ、めまぐるしくかわるだろう。それに応じて、知的生産技術のシステムも、おおきくかわるにちがいない。ただ、その場合にも、ここに提示したようなかんがえかたと方法なら、じゅうぶん適応が可能だとおもうが、どうだろうか。
方法については、時代に応じて新しい道具が登場し、どんどん変わっていくだろう。しかし人間の思考法はそんなに早くは変わらない。まだまだ得る所のある名著だろう。