プリズナートレーニング ホリゾンタルプルをクリアするコツ

自宅で簡単にできて効果抜群の自重トレーニング、プリズナートレーニングですが、プルアップのレベル2、ホリゾンタルプル(斜め懸垂)は初心者の最初の壁です。本記事ではホリゾンタルプルをクリアするためのコツを、ワークアウトの力学的解析から導きます。

結論から言えば、足が滑らないように、滑り止めのマットや、足が引っかかる段差や穴を使うのが上達のコツです

プリズナートレーニングって何?と言う方は下記の記事から読んでみてください。

ジムに通うお金や時間をかけずに、自宅で強靭な肉体を作るトレーニング法の解説書。4ヶ月やってみた感想やトレーニングメニュー、必要な機材などを紹介。

ホリゾンタルプルの力学的解析

ホリゾンタルプルの動作をモデル化すると下の図のようになります。

図1 ホリゾンタルプルのモデル図

図はワークアウト中の人を横から見たところです。体は重力により、鉛直下向きに引っ張られています。このとき体を支えるために腕と肩でバーを引っ張ります。また地面と接する足で、地面からの反発力を得て体が動かないようにします。

バーを引っ張る力の向き

この図でまず重要なのは、バーを引っ張る力の向きです。このワークアウトを行うためにはバーを引っ張る力は図のように斜めに与えなければなりません。またこの時、脇の部分の角度にも注目です。この角度は何も考えないと90°ぐらいかとイメージしがちですが、実際には90°よりも小さく80°ぐらいになります。

では、バーを引っ張る向きが地面に垂直な方向だったら何がいけないのでしょうか。次の図はバーを鉛直方向に引っ張る場合を示しています。

図2 バーを鉛直方向に引っ張る場合

鉛直方向に引っ張る場合、バーの真下に腕を伸ばしてぶら下がる格好になります。このとき実際に腕を縮めるとどのような動きになるでしょうか。かかとを支点にした円周上を頭部が移動していくことになりますが、実は棒の真下にぶら下がると下図のように非常にやりづらいのです。

図3 バーを鉛直方向にひっぱるとやりづらい

体型にもよりますが、おそらく顔の前にバーが来るような形で非常にやりづらくなります。フォームとしても理想のフォームからは外れています。

参考までに、「プリズナートレーニング」に示されたお手本のフォームを見てみましょう。

(画像はプリズナートレーニング 圧倒的な強さを手に入れる究極の自重筋トレから引用)

腕はバーの真下ではなく、斜めの方向に伸びており、脇の部分の角度は90°よりやや小さい、80°程度のフォームであることがわかりますね。まずはここに注意が必要です。とにかくバーを斜めに引っ張らないとちゃんとした動作にならないのですね。

足元の摩擦力がフォームの安定に必要

バーを斜めに引っ張ることが、このワークアウトに不可欠であることがわかったところで、次に着目するのは、

  • 自重
  • バーを引っ張る力
  • 地面からの反発力

それぞれの力の釣り合いです。

図1 再掲

この3つの力を抜き出して釣り合いを見てみましょう。

図4 ホリゾンタルプルの各力の釣り合い

自重は鉛直下向きに働きます。これに対して体を支えるために、バーを引っ張る力と、地面からの反発力を使い、その2つの力を合わせた“合力”により自重と釣り合う力を得ています。

前にも書いたように、バーを引っ張る力は斜めに傾いています。そのため、鉛直方向の力以外に、水平方向の力も一緒にかかってしまいます。この水平方向の力を打ち消さなければ体が横に動いてしまいます。

図5 バーを引っ張る力と水平方向の力

そこで体を水平方向に動かさないためには、「バーを引っ張る力」の水平方向成分とちょうど同じだけ、地面からの反発力で打ち消さなければなりません。

図6 地面からの反発力による水平方向の力

この地面からの得られる水平方向の反発力とは、つまり“摩擦力”のことです。摩擦力を得るためには、足を滑りにくくするマットや、屋外ならば足元を少し掘ってくぼみをつけておく、と言ったことが有効でしょう。

図7 ホリゾンタルプルには足元の摩擦力が重要

この時、もし摩擦力が足りないと、ズルズルと足が滑っていき、先に示した図2のような、バーを真下から引っ張る状態になってしまいます。この状態では正しいワークアウトができません。摩擦力が足りないためにほかの部位で力んだり、フォームが乱れたりすると、本来意図しない負荷が肉体に加わり無駄に消耗することになります。このような状態では、レップス数もこなせないのは当然です。

まず、正しいフォームで動作ができるように、足元の滑り具合にも注意を払ってやってみると良いのではないでしょうか。正しいフォームでできるようになれば、時間はかかってもいつかは上級レベルをクリアできる日が来るハズ!

まとめ

ホリゾンタルプルをうまくやるために、足をしっかり固定することが大事、というのは古参のトレーニーであれば、経験的によく知られていることと思います。今回はその先輩方からのアドバイスをあらためて簡単な物理、力学的なモデルとして示すことで、科学的な理解ができるように記事にしてみました。

トレーニーの皆様に役立てていただければ幸いです。ちなみに私は2019年9月現在、プリトレ歴だいたい1年ですが、まだホリゾンタルプルの中級にも達してません(汗) まだまだ精進が必要ですね。

参考文献

下記のリンク先は、ホリゾンタルプルクリアに向けての参考になると思います。

1)ホリゾンタルプルの会

ホリゾンタルプル上級(30回3セット)クリア迄の約2年間の軌跡をまとました。

https://min.togetter.com/vrsHb6D

このまとめの作者の鶴岡信慶【つるさん】(@golpanotsuru3)さんは、ツイッターでのタグ「#ホリゾンタルプルの会」を作った方です。2年間の成長の軌跡がまとめられており、伸び悩んでいる人を勇気づけてくれる内容です。

「#ホリゾンタルプルの会」誕生の瞬間!

2)【プリズナートレーニング】ホリゾンタルプルのレップス数が伸びない時の対処法

Rayさんのnote「【プリズナートレーニング】ホリゾンタルプルのレップス数が伸びない時の対処法」は非常に実践的な内容です。結論は、ホリゾンタルプルのreps数が20reps×2setまで到達したら、次のジャックナイフプルも織り交ぜてトレーニングしよう、というもの。あまり杓子定規にならず、柔軟に取り組めばよいですよね。我々はプリズナートレーニングの愛好家であって、ホリゾンタルプル競技者ではないのですから。

https://note.com/ray_cc_sprint3/n/n6b691800984b

3)打倒ホリゾンタルプル!強化トレーニング 6ヶ月プログラム

https://southfourleaf.com/pullup_step2_6monthprogram/

かめやんさんの記事では、ホリゾンタルプル攻略に向けたかなり詳細な戦略(トレーニング計画など)が書かれており非常に参考になると思います。闇雲にやるのではなく、きちんと戦略を立てることが大事と勉強になります。

その後の経過も報告されています。

https://southfourleaf.com/hunging_key/

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