論理的思考で成果を出す:考えるのが苦手な人に読んでほしい7冊の読書ガイド

職場の後輩に論理的な思考が苦手な子がいるので、育成するにはどうしたものか考えた結果、以下の本を読んでもらうことにしました。論理的な思考が苦手な人や、能力を伸ばすために独習したい人は参考にしてみてください。

論理的思考で成果を出すために

本題に入る前に少し説明します。論理的思考で成果を出すためには、下記のプロセスを踏む必要があります。

  • まず思考の材料を得る。外部の情報を取得する。
  • 取得した材料を整理し、まとめなおし新たに体系づける。
  • 他人に伝えるために、考えた内容を出力する。

これらのプロセスのうち、どれか一つが欠けても仕事上や研究上の評価・成果には繋がりません。

一般に「論理的思考」「ロジカルシンキング」では真ん中の「取得した材料を整理し、まとめなおし新たに体系づける」という所に目を向けがちですが、まず考えるための材料を適切に、正確に取得する必要があることは忘れてはいけません。

また、どれだけ価値のある着想があっても、それを他者に伝え、理解してもらえなければ決して評価してもらえません。

これら一連のプロセスを全てこなしてこそ、論理的思考を役立てることができると言えるでしょう。それでは、このプロセスの流れに沿って、おススメしたい本を紹介していきます。

思考の材料を得るために

「本を読む本」モーティマー・J・アドラー

情報を入手する手段は色々ありますが、「文章を読む」ことはその中でも最も基本的かつ重要な方法ではないでしょうか。しかしその重要性のわりに、日本での義務教育ではまとまった文章の、つまり本の読み方をきちんと教えていません。

「本の読み方」なんて知っている、と思われる方がほとんどと思いますが、一度この本を手に取って読んでみましょう。本書では、効率よく正確に筆者の主張を読み取り、自分の「血肉」とするための読書技術「積極的読書」の方法が体系的に詳細に示されています。下記の記事では、積極的読書をテーマに書いています。御覧ください。

「本を読む本」は、「読むに値する良書を知的かつ積極的に読むための規則」について述べた本である。 キーワードは「積極的読書」。良く整理・体系化された名著であり、読書家を自認するならぜひ読んでおくべき一冊。

またこれだけ情報が溢れている時代です。まずその本が読む価値があるのかどうかを、適切に判断しなければなりません。そのためには効率よく筆者の主張を知る、「点検読書」の技法が欠かせません。下記の記事では、点検読書、について解説しています。

「本を読む本」は読書論の古典ともいえる名著だ。その中で紹介されている読書法、点検読書とは、いわば「系統立てた拾い読み」のようなもので、一冊の本がどのような本であるか、短時間で効率よく性格に把握するための読書法だ。

読書論に関して、様々な本が出版されていますが、この本を超える本はないのではないでしょうか。まずはこれを読んでおけば間違いない一冊です。

思考を整理し、まとめて体系づける

得られた情報を役に立つように加工するために。

「思考の整理学」外山滋比古

そのまんまズバリ、のタイトルの「思考の整理学」をおすすめします。よく書店でも目立つ所に置いてあるので、目にしたことのある方も多いかもしれません。ロングセラーとなっており、長い間読み継がれていますが、それはこの本の内容が決して古びることなく、いつの時代にも通用する役に立つものであるという証拠です。

小手先のテクニックやスキルは時代によって変わっていきますが、頭を使って考えることは、いつの時代にも必要とされる最も基礎的で潰しの効くスキルではないでしょうか。一度読んでおいて損は無いでしょう。当ブログでのレビューは下記の記事です。

大阪桐蔭高校出身で中日ドラゴンズ ドラフト1位の根尾昂選手の愛読書としても有名。思考法に関する名著。自力で飛べないグライダー人間では、コンピューターに存在価値を奪われる という指摘はAI時代を迎えた現代人にも深く突き刺さる言葉だ。

「ロジカル・シンキング」照屋華子・岡田恵子

これもそのまんまのタイトルです。有名な本ですね。経営コンサルタントが使うようなフレームワークなど紹介されています。MECEとかwhat so / why so とかで、基礎的な内容をあつかっていると思います。

この本は大学院生のころに読んだ記憶がありますが、なんか当たり前の事が書いてあるなぁ、と思った記憶があります。でもこれを読んで参考になる、あるいは内容が難しく感じるようであれば、論理的思考を鍛える余地が大きく残されているのかもしれません。そういう意味では本屋で見かけたらパラパラと見てみると実力テストになると言えます。ちょっと大きい本屋なら必ず置いてあるはず。

「方法序説」ルネ・デカルト

思考を極限まで極めた人々、それは哲学者や思想家と呼ばれる人達ではないでしょうか。彼らの思考の跡が残された、良質な哲学書や思想書は読むことで、人を成長させるものだと思います。でもいきなりカントとかヘーゲルとか読んでも、難解でまったく歯が立ちません。(私もカントは挫折したままになってます。。。)

そんな中で、デカルトの「方法序説」は比較的短く、薄い本なのでつまづきながらも読み通す勝算が高いと思います。まずは最初っから最後まで読み通すことが大事、とは「本を読む本」にも書いてある通りです。この本で示される、「我思う、故に我あり」というフレーズが非常に有名で大抵の人は聞いたことがある、というのもとっかかりとして良いですね。

なお、哲学書を読むときには、哲学者の主張する「結論」だけでなく、それを導くまでの過程や前提、その人の生きていた時代背景や、何でその哲学者がそんなことを考えたのか、と言うモチベーションを知っておくと良いです。

往々にして偉大な思想家の考えた事は、当時においては超画期的な主張であっても、現代の我々に取っては既に当たり前になっていたり、結果として誤りであったりするからです。例えば、民主主義や資本主義と言った概念を我々は疑う事なく利用して生活しているわけですが、まだそのような概念が無かった時にそれを創造した、まさにその時代の背景を知って読まなければなりません。

また、その結論が仮に現代では誤りとされていたとしても、その思想家がどのようなプロセスで論を進めたか、という点には学ぶべきことが多いのです。

デカルトの場合で言えば、彼が生きていたのは、あらゆるものは疑いうる、世の中には確かな物など何もない、と言う「懐疑主義者」が跋扈し虚無的な思想が流行した時代でした。その環境において、懐疑主義者でも絶対に疑いえない物を示そう、そしてそこから神が存在することを導いてやろう、と言うのが背景であり、モチベーションです。そのような基礎知識があることで、「我思う、故に我あり」にデカルトが込めた想いのたけが、身近に感じ取れるのでは無いでしょうか。たとえ、彼の提示する神の存在証明に納得いかなくても。

ちなみに意味がわからなくても、百回読めば意味が自然とわかってくるという意味の「読書百遍義自ずから見る」と言う言い回しは本当なのか、実験して調べた研究があります。この研究で題材として使われたのはデカルトの「方法序説」でした。

「読書百遍義自ずから見る」はじめは理解できない文献でも百回読めば意味が理解できてくるという言葉だが、本当に効果はあるのか。短期大学にて学生たちを対象にして実地調査を行った研究論文を読んでみた。結果は効果はある、ということだが。。。

思考の結果を出力する

「考える技術・書く技術」バーバラ・ミント

これもコンサル関係のロジカルシンキングの名著ですね。これを読んだ時思ったのは、「本を読む本」の書くバージョンだなってことです。合わせて読むことでお互いの理解が深まると言うシナジーが期待できます。今はもう手放しましたが結構好きな本です。

「理科系の作文技術」木下是雄

これはもう鉄板なので、論を待たない名著。読んでない人はすぐに読もう。損はさせない。当ブログでの紹介記事は以下。

仕事で使える文章作成の参考書として、これに勝る本は無いというほどの名著。学生時代はもちろん、社会人になってからも間違いなく役に立つ。仕事は他人からの評価でその価値が決まる。その評価を左右するのが「理科系の作文技術」が伝える報告の技法だ。

ノウハウコレクターにならないために

最後は少し毛色の違う本ですが、紹介します。

「読書について」アルトゥール・ショーペンハウエル

ドイツのちょっと陰気な哲学者、ショーペンハウエルの書いた読書論。箴言を多く残したことで知られていますが、この「読書について」も箴言の塊のような一冊となっています。

本を読むと賢くなった気がするし、色々な本を読みたくなります。世の中には多読家という人がいてやたらめったら本を読んだりしていますが、ショーペンハウエルはそういう読書を否定します。

いわく、本を読むとは、物を他人に考えてもらう行為であると。読書により、著者の歩んだ足跡を見る事はできる、だが彼がその場で目にしたものは、自分でその場に立たなければ分からない。また、たくさんの本があっても、乱雑で整理が行き届いていない書庫であれば、少ない本であってもきちんと整理された書庫の方がまし、それは知識においても一緒。などなど、自分の頭で考え抜く事を大事にした、哲学者ならではの重みのある言葉が並んでいます。

手段と目的を履き違えて、ノウハウコレクターにならないための一冊。

哲学者 ショーペンハウエルの書いた、読書するにあたってのガイドブック。とにかく自分で考えることの大切さが巧みな表現で繰り返されている。たくさんの出版物や情報がある中で、どのような本を読むべきかの指摘は、情報があふれる現代でも重要な課題。

論理とは言語を操る力

以上の本を読んでいくと、読むこと、考えること、書くことは、それぞれ違うことのようで、実はお互いに関連しあっていることが分かると思います。何で繋がっているかと言えば、それはいずれも「言語を操る行為」である点です。論理とは言語を操る力そのものと言ってもいいのです。言語能力と、論理思考、どちらも左脳が司っているのは偶然ではなく、どちらも不可分な関係であるからなのです。

言語能力を鍛えるという意味では、上記に挙げた本以外にも読書をすることで論理的思考全般を開発することができるはずです。(ショーペンハウエルのじっちゃんに怒られないように、)自分で考えるための読書をどんどん楽しんでいきましょう!

おまけ:読書が重要であるもう一つの理由

外国語や学習塾、スポーツなどどんな習い事よりも優先して子供に身につけさせたいスキル。それが読書である。文字を早く読み、その内容を正確に理解することは、日常のあらゆる場面で有利に働く何よりも重要なスキルである。
週に一冊は本を読む、読書が趣味の私。ここ数年は紙の本はほとんど買わずに、電子書籍(amazon kindle)をメインにしています。だって...