組織やマネジメントの力をつかって仕事をするレバレッジ的発想

職場でのミーティングにおいて

職場でのミーティング中、仕事の進め方についてメンバー間でディスカッションしていた時のこと。メンバーの一人が仕事の進め方に対しての自分なりの考えを紹介してくれた。

彼の思想は下の図のように表現できる。

仕事において成果を上げるためには、自分の実力以外にも、組織の力やマネジメントの力を使うことができる。これは仕事をする上での「プラットフォーム」として考えることができる。仮に実力が不十分であっても、プラットフォームの力をうまく援用することによって、大きな成果を達成することができる、と言う内容だ。

彼は中途入社でまだ日が浅いため、今の職場での製品知識や、組織の仕組み、部署間の関連性などに対する理解が低い。そこは自分自身が今後伸ばして行かなければならない能力として認識している。だけど仮にそこが薄かったとしても、こういう仕組みで成果をあげて貢献していきたい、いくことができる、という意志の表明である。

これだけの思考、分析ができる社員なので、地頭は非常によい。そしてそれを他人に伝えるプレゼンテーション能力もある。私は彼の実力に何の心配もしていない。ただ、現時点においてどうするか、また必ずしも能力に恵まれない人にも成果をあげてもらうためにどうするか、あるいは能力がある人が最大限それを活用して成果を上げるには、プラットフォームの充実が欠かせない。

こんな議論をメンバー間でしているうち、組織やマネジメントの力は受動的に見ればプラットフォームであり、能動的に見ればレバレッジ(テコ)として見做せる、という着想を得た。この記事ではそんな話をしてみたい。

レバレッジ(テコ)のアナロジー

組織やマネジメントの力を借りる

前述のように、組織やマネジメントの力は受け身の立場で見れば、プラットフォームとみなせるが、自分の側から能動的に活用していく、という視点で捉えればテコのような道具として考えることができる。

マネジメントの力や、組織の持つ力はテコの棒に相当し、それを使って自分の実力を拡大することによって、大きな仕事や成果を生み出すことができる。ここで特徴的なのは、「テコは道具であり、使い方が大事」である、という観点だ。

テコの使い方にはコツ(テクニック)がいる

テコは「道具」なので使い方が大事で、テクニックが必要だ。まず基本的なこととしてテコの原理上、支点の位置をどこに設定するかが重要だ。支点と自分が力を加える力点の距離を離せばそれだけ少ない力でも、テコを動かすことができる。その一方で、棒を動かす距離は長くなりたくさん動かす必要がある。

まだ自分の実力が少ない状態で、色々関係各所や上司の力を借りて根回し等に時間をかけながら進めるイメージに相当するだろうか。

一方で、支点に力点を近づければ、大きな力が必要だが、ちょっと動かすだけでテコの先端の作用点は大きく動くことになる。これは組織の中でもある程度の権限や権力を持つ人が、自らの裁量でもってトップダウンで進めるイメージである。

また、道具の使い方をそもそも間違えていると、まったく成果は得られなかったりする。例えば、テコに対して力を入れる箇所が全然違う場合や、テコの原理を無視してテコを動かそうとする場合、力をかけても思うような成果は上がらないだろう。

中にはテコの存在を無視して、直接自分の力だけで事にあたろうとする人もいたりするが、せっかく組織に所属しているわけだから、組織の力や周囲の力を利用したほうが楽に仕事ができるのではないだろうか。

テコの形には個性がある

さて、このアナロジーではテコが「組織」や「マネジメント」を意味する。当然ながら、組織やマネジメントの手法においては様々な個性が存在する。よって、テコの形には、各組織やマネージャーによってさまざまな形をしていると考えられる。

単純に、組織やマネジメントの力が弱ければテコとしては機能を果たせない場合もあるだろう。例えば、あまりにも細いテコは負荷をかければ折れてしまうし、短すぎるテコでは使うためにかなりの力を使わなければ動作しない。

中には下図のように、変な形のテコもあるだろう。この場合ちょうど中間地点に支店を持ってきても、テコとしては働かず、少しオフセットさせるか、天地逆転させることでテコとして使用できる。例えば、組織の中の指揮命令系統や、マネージャーの関心の強さ、弱み強みなどが、このような形のテコを生み出すだろう。

他にも次のようなテコは多くの組織に存在するだろう。全体のうち、一部のみ太さが細くなっており、局所的に弱点を持つテコである。

この場合、テコの効果を最大限得るために一番端部に力を加えても、途中の組織の弱点や抵抗により、たわんでしまい作用点に力を伝達できない。この場合、弱点を補強することが必要だが、往々にしてそれには時間を要するため、対処療法的に、弱点を回避して力を投入する必要がある。

ある組織において長くいる人は、このような組織や人の特性を知っているため、テコを使って成果を生み出しやすいものである。

ストレスなく楽して成果を上げるために

さらに言えば、テコは必ずしも一人だけでなく複数人で使うこともあるだろうし、自分一人では到底取り回すことができないような大きなテコを、実力者の協力を得て使うこともあるだろう。

いずれにせよ、仕事をしていく上でストレスなく、楽して成果を上げるための物の考え方としてテコのアナロジーは役に立つのではないだろうか。