私の考える組織のあり方とプロダクトマネージャー制度について。
目次
組織像
組織は長期的な理想像(いわゆるビジョン、ミッション、企業理念)の元、全体を俯瞰し統合した戦略を作り、その戦略から個別の戦術が決まり、その戦術の元、各現場での戦闘がおこなわれる。
帰納的(インクリメンタル的思考)を否定しないが、演繹的(グランドデザイン的思考)は必須である。
参考文献:
プロダクトマネージャー(PdM)
プロダクトマネージャーはミニCEOである。
メーカーとしての事業の中核である「プロダクト(製品)」に関する全てを司る役割である。
What と Why
製品の企画、開発、製造、品質管理、サービス、ライフサイクル全体を統括して責任を持って進める役割。製品にまつわる様々な検討事項、課題について特にwhat(何を?)とwhy(なぜ?)の観点から問い、考え、決断する。
PdMの目的はプロダクトの成功である。プロダクトの成功とは、
- ビジネス的成功:売上、利益、販売台数、市場シェア、etc
- 社会的成功
社会的成功とは、自らの担当プロダクトに世界に存在する意味を与えること。
なぜ、自らのプロダクトは世界に必要なのか、を知らしめること。
そして、関わるメンバーにやる気、誇りを持たせ、業務を通じて自己実現の満足感をもたらすこと。
自社がその事業をやる意味は何かという問いに答えを出すこと。
権限と権力
PdMの責任は重い。しかしどんな仕事でもそうだが、責任に見合う権限は与えられない。そのため例えばライン従事者に対する直接の命令権限はない。
業務を行うためには計画を立案し、上長(究極的には社長)の裁可を得て各部の指揮系統を使い組織を動かす。この関係は、経営者と投資家、株主との関係に近い。経営者(PdM)は経営計画を示し、投資家、株主(PdMにとっての上長、社長)を説得し、出資(計画実行の許可、メンバーのアサインなど)を得る。
この仕事をやり遂げるためには、権限を持たずに業務を遂行する能力(権力の発揮)が求められる。
参考:
全体を見渡して考える。
PdMは全体を俯瞰して考える。常に、個別の最適化ではなく、全体の最適化を意識すること。近視眼的、場当たり的対応ではなく、長期的、本質的な対応を行うこと。現場を知りながら、現場を超越した判断ができること。近くと遠くを同時に視ること。そのバランス感覚が求められる。
PdMの本質的活動
PdMの業務は下記のツリーの要素からなる。
チーム作りと運営
全ての根幹となるのが、チーム作り、関係者との協業を行う能力である。先にあげたようにPdMの本質はミニCEOであり、その担当範囲は極めて広く、責任も重い。しかし、その業務をただ一人で以て行う必要はない。(無論、一人でやっても良いがそのようなことができるスーパーマンはまず存在しないし、組織のリスク管理上も望ましくないものと考える。)
そのため、PdMの職務をチームとして処理する体制を作ることが必要と考える。そのためには、関係各所の担当者と協力し、プロダクトマネジメント”チーム”としてプロダクトマネジメント業務を遂行する、チーム作り、組織運営を行う必要がある。
CEOなので究極的にはなんでもやらなくてはいけないが、全てを一人でできるわけではないので、自分でやらないことを決めて、それを代わりにやってくれる人を見つけなくてはならない。一人でやるのではなく、様々な社内(社外も)のリソースを有効活用していくこと。
PdMが行わなくてはならないのはまず、このチームとしての業務ができる環境づくりである。
チームのビジョンとロードマップの策定
チームとして動くためには、チームとしての共通目標、共通の意識が必要である。チームのビジョン、理念を考えて、合意すること。そしてそれを実現するためのロードマップを定めること。ロードマップを具体的に進めるための各種要素を分析し、計画をたてて実行していくこと。
プロダクトマネージャーが目指す、プロダクトの社会的成功とは何か、に応えることは、チームのビジョン、理念を定めるにあたり、重要であろう。
その芯となる理念を元に、営業・販売、技術開発、生産・製造、保守・サービスといった各要素のロードマップが描かれていくだろう。
また、チーム運営を行うにあたっては自分と異なる様々な他者と協働する必要があり、そのためには哲学的思考が有用である。
ビジネス的判断
PdMはプロダクトの成功を目指す。その成功のうち、まずはビジネス的成功を達成しなければならない。営利企業において、その事業にビジネス的合理性がなければ事業の存在意味が無くなる。そのためには、ビジネス的に妥当な判断を行うことが求められる。売上、利益、損益分岐点分析、販売戦略、マーケティング、人員配置、などなど。
ユーザー、市場分析
新製品、新機能、新サービス(保守に限らず、新しいビジネス形態の考案)などにおいては、ユーザーや市場の要求を察知して把握する(洞察する:insight)必要がある。
ユーザーや市場の分析においては、「イノベーションのジレンマ」に注意すること。ユーザーや市場は、自分自身が本当に必要なものを知っているとは限らない。
”馬車”しかない時代に、”自動車”を、”ガラケー”しかない時代に、”スマホ”を提案することができるかどうかが、リーダーになれるかどうかの分水嶺である。
技術的妥当性の担保
以上の決断の基礎になるのは、技術的な妥当性である。技術的に妥当でなければ、上記の決断も絵に描いたもちに過ぎない。一方、技術的な意味、興味があるだけでビジネス的な価値や、ユーザーへの価値が伴わなければそれもまたプロダクトとしては無意味である。両者はお互いに補完しあう関係で車の両輪である。
具体的な職務内容例
- プロダクトチームの会議運営
- 販売戦略、マーケティング
- 新製品、新機能、新サービスの企画・検討
- プロダクトの収益性の検証と改善、損益分岐点分析
- トラブル解決の司令塔(特に重篤なもの(リコール等)の指揮、対応)
- 開発スケジュールの管理、開発完了、市場投入の判断
- 生産現場の不具合フォロー、生産効率化、歩留まり改善
- 商談、販売フォロー
- 製品ライフサイクルの設計
プロダクトマネージャーの対価
- 名誉。
- 他人にやらせるより自分でやりたい。
- 楽しい。楽しくない場合、何かおかしい。
- こういった業務ができる人間は、今後も世の中からの需要が絶えないはず。
名前はなんであろうと、そして制度があろうと無かろうと、機能としてのPdMは存在し続ける。
名前はプロダクトマネージャーにこだわる必要はない。そういう肩書きも必要ないし、そういう制度が存在する必要も実はない。なぜなら公式の権限が無くとも、権力を使って仕事をするのがプロダクトマネージャーだから。名前や役職があるから、あるいはそういった役職を与えるから人は動くのか?成果があがるのか?否、動いた後に役職や名前はついてくる、動いたから成果が生まれるのである。