目次
就活生と面談した所感
中小企業で中途採用の面接や新卒採用のスカウト、面談等を担当しています。なお現役のエンジニアでもあり、マネージャーでもあります。
まだ21年の6月ですが既に23年卒のスカウトを開始しました。まずは個人面談から。この時期から始動している方達なので皆さんそれぞれに考えがあって活動されていて、面談していてこちらも刺激を受けることも多くありました。
不安の中、ただひたむきに頑張ってる彼らに幸あれかし、と願っています。
皆さんから頂いた刺激のお返しに、この記事で面談していて気づいたこと、採用担当者としての目線をお話ししたいと思います。
専門分野(研究内容)と就職先の業務との関連性について
自分の今の研究内容がこの分野だから、研究内容がジャストフィットする業界しか自分は求められていないのではないか?という考えを持っている人が結構いるかもしれません。私も就活していた時はそのように考えていた気もします。
でもそんなことは全くないです。仮に研究内容と職務の内容がマッチしていたとしても、ほとんどの場合は入社すれば新たにたくさん学び直さなければならないものです。その時には、数学や物理といった基礎的な学問の能力や、研究を通じて身につけてきているはずのサーベイ能力、論理的思考力、自分の手を動かして問題に向き合って解決する能力、といった内容が試されます。
入社時点での専門性の差というのは、長いこれからのキャリアのうちではほんの僅かな差に過ぎないと思います。研究分野は選考の際の一材料とはなりますが、あくまで一材料に過ぎないものと私は考えています。
ですので、そういったことを理由に志望業界を絞り過ぎない方が良いと思います。
どのみち就職してからも何らかの形で一生勉強はし続けなければなりません。そうやって自らの牙を研いでいかなければ生き残ることはできないでしょう。これは別にエンジニアに限らずの話です。
コミュニケーション能力とは何を指すか
コミュニケーション能力として私が見ているのは、周りの人と和気あいあいとやっていける、とか人とすぐ打ち解けられる、とかいう種のものではありません。もちろん組織は人同士の集合から成り立っていますから、そういった個性はあれば望ましいとは思います。
しかし、仕事をする上で求められるコミュニケーション能力としては
- 自分の主張したい内容を明確に簡潔に伝えることができる。
- 自分の伝えたい内容に対して適切な伝達手段を選ぶことができる。(口頭、メール、チャット、図表、グラフ等々)
- 事実と意見を分けて伝えることができる.
- 質問に対して的確な返答ができる。
- こちらの言っていることが理解できない場合、対話をしながらその意図を絞り込んで理解していける。
といったような内容を見ています。研究発表の質疑応答やゼミナールでの輪講に近いイメージかもしれません。
「自己分析」の方法:正解のない問題もある。
「自己分析」のやり方に悩んでいる方から相談を受けました。とても真面目な方で、本やネットの情報に従って手順通りにやってみているのだが、どうも納得が行かない。調べているうちに様々なやり方や、仕事に対する優先順位の情報が出てきて一体何が正解なのか分からなくなってしまった、と。
それに対して回答したのは、「「自分自身を理解する」ということは超難問で一生のテーマです。」ということです。
ある手続き通りに行えば、自分自身の特性がわかる、なんて便利な方法はないものだと私は思っています。大体人はどんどん変わっていくものですし。結婚、子供の誕生といった生活環境の変化や、配置転換、昇進といった職業上の変化により人の考え方や個性は様々に変わっていきます。そもそも毎日、食事をして排泄して自分を構成する要素は物理的にもどんどん入れ替わっていくのに、自分の人格だけが固定されていると考えるのは、不自然かなと思います。
おそらく質問をくださった方は手順通りにやれば、絶対的な自分自身の特性が理解できるはず、という思いが念頭にあったのでしょう。一方で自分自身で試しているうちに、自分自身というものが一つの分析結果だけで表しうるものなのか、疑問に感じて悩んでいたものと推察しています。
だから様々に変わっていく自分自身のある時点における一断面を見るものとして自己分析を行えば良いと思います。
私が提案したやり方は自分自身の好きと嫌いの感情に向き合うことです。自分が今までに読んだ本、漫画、映画、楽曲、経験したこと、を振り返り、好きなものと嫌いなものをグルーピングしましょう。そして自分の好悪の感情を理解しましょう。その感情に照らし合わせて、今の自分の選択は納得できるものであるか、見直してみてはどうでしょうか。
そうして抽出された好悪の基準はすなわち、自分の大切な「価値観」です。他人とか世間や企業が良いとするもので無く自分の価値観に従って選んだ方が最終的な納得感が得られやすいです。自分自身の人生の価値は他人が値づけしてくれるものではなく、自分自身が決めるものですから。
正解がないものが世の中にはいっぱいあります。理屈で考えてもわからないことがたくさんあります。
そういう時は自分が良いと信じるものを、自分の意思で責任を持って選んでいくしかないです。
理屈で片付きそうな、エンジニアの仕事も実は理屈で解決できないことを選ばなければならない場面が多々あります。例えば「機能向上」vs「原価低減」などは典型的なテーマでしょう。もちろんそのジレンマを創意工夫で解決する、というのがエンジニアの仕事ではありますが、物理法則にはケンカできないのでどうにもならないことも多々あります。
その時、自分はどういう選択をするのか、そこにその人の価値観が現れ、それが製品に反映されていくものと思います。
そうして選んだあとは、自分の選択が良かったと肯定できるように真摯に取り組むしかないものです。一回限りの人生においてABテストは実施できないですから。
外的な動機付けと内的な動機付け
「社会に貢献したい、世の中に貢献したい」と言うのは場合によっては外からどう評価されたいか、という自分の外側からの動機付けである場合があります。その動機自体は大切なものですが、もう一方で自分が好きなこと、やりたいと思うことも大切と思います。
他人からの求めに応じるだけでは、燃え尽きてしまうこともあります。私も世の中から必要とされている仕事をしている、と言う自負があります。一方で自分のアイデアで物事が上手くいったとき、自分の能力が限界を超えて発揮されたとき、「俺ってスゲー!」って思えたとき、仕事の喜びを感じます。この喜びを求めることが内的な動機付けと私は思います。
外的な動機と内的な動機はどちらも大切にした方が良いと思うのです。
何回就職しても良いよ
就活する時、どの企業に就職するかは、学生さんにとっては人生の一大決心でしょう。でもその企業や、その分野、その職種が本当に自分に合っているか、自分のやりたいことか、というのは極論、やってみなければ分かりません。また、先にも述べたように自分自身も固定されたものではなくて変化していくものです。だからやりたいこともどんどん変わっていってもおかしくはありません。
日本だけを対象としても、全国にはおよそ350万者の企業があります。大企業だけで考えても1万者程度あります。350万者の企業のうち仮に自分とマッチングする企業が350者存在するとしましょう。これだけの数を想定しても全体に対してたったの0.01%に過ぎません。
さて1回の就活でどれだけの業界、企業を調べることができるでしょうか?頑張って100者のことを調べられれば大したもの。真剣に調査・比較するとなれば10者程度が限界と思います。果たして一回の就活で0.01%の正解を引き当てられるものでしょうか?
その上最終的には企業に加わって働いてみて中から見てみないとわからないことがたくさんあります。
今の時代は、転職が当たり前の時代となりました。就職するのは最初の一回だけではありません。だから少なくとも若いうちは積極的に挑戦していくのも悪くないと思います。合わなかったらやり直すことは不可能ではないのですから。何回就職しても良いんです。(私は転職経験ないですけどね。)
いつでも真摯に向き合って働き、また自分の力を伸ばす努力を可能性を開く行動をしていればまた道は開けるものと思います。
皆さんはいろいろな不安とともに生きているものと思います。しかしそれらの不安はそれだけ多くの可能性を皆さんが持っているが故に感じているものなのですから、ぜひ内なる良心にしたがって良い人生を切り開いていただければと思います。そして私も皆さんとの出会いを糧に負けずに自らの人生を切り開いていきます。
なんか聞きたいことがあったらコメント欄にでも書いてください。私にできる範囲のことはお手伝いします。