筆者は理系大学院を修了し、その後、理化学機器メーカーにて開発業務に従事し、 勤続はそろそろ10年になる。
この間、幾度も「会議」、「打ち合わせ」に出席してきたが、きちんと成果の出た会議は多くない。無駄な会議が多すぎるのだ。
それは、誰も「会議をどう行うべきか」を理解しても、考えたことすらも無いからだ。ただ漫然と行われる会議は、組織の生産性に深刻な影響を与える。
本記事では、私の実体験をもとに、無駄な会議の害悪、そしてきちんと「成果」が出る会議、今までの3歩先を行くための会議についてその方法論をお話ししたい。
目次
なぜ、無駄な会議はダメか
人と時間のリソースを無駄遣いすることによる「機会損失」
会議に参加している間、参加者は場所と時間を拘束される。この間、他の仕事はできない。仮にできたとしても能率は制限された状態だ。
例えば10人を集めて、2時間の会議を行ったとしよう。それで何か成果があがるのならばまだ良いが、成果が出なければ
10人×2時間=20人・時間
分の会社のリソースが削られる。組織において、人はかけがえのないリソースだ。
また、時間は1日24時間しか確保できない最も重要なリソースだ。この2つの貴重なリソースを無駄な会議はガンガン食いつぶしてしまう。
この結果、会議では無く他の仕事を行っていれば挙げられた成果が、会議を行うことによって消滅してしまう。成果を上げる機会を損失してしまうのだ。
決まらないことにより行動が起こせない:意思決定の遅れ
会議の大きな目的とは「何かを決める」ことである。しかし、中身のない会議においては、往々にして「何も決まらない」ことがある。
結局結論は先延ばしされ、一ヶ月後の会議まで持ち越しということも世間にはざらにある。一ヶ月前にスタートを切れていたはずの仕事が、まだ開始できないとなると、重大な遅れを来すことになる。
とあるカリスマ経営者に指導を受けていた時期があるが、その方が良くおっしゃられた言葉がある。
Time is money. ではない、[Speed] is money. なのだ。ある経営者
時は金なりではない。現代の競争社会においては、必要な決断を速やかに行える”Speed”こそが利益を生むのだ。決められない会議は、”Speed”を著しく低下させる組織の癌である。
会議を行うものは、これを肝に銘じなければならない。
会議を変えれば生産性は上がり、3歩先を行くことができる。
無駄な会議の害悪について、ご理解いただけただろうか。無駄な会議は、組織の効率を下げるブレーキのようなものだ。ここを改善し、適切なタイミングで意思決定を行う:アクセルを踏んであげれば、組織の効率は大きく改善することができるはずだ。
下に図示したように、会議が成功した場合と、失敗した場合の差は思ったより大きいのだ。会議を成功させ業務を1つ進められればそれだけで3歩先を行くことができる。
会議をよくするために:「会議設計」のすすめ
会議を成功させるためには、事前に会議をどう実施するか計画しておくことが重要だ。それは会議設計と呼ばれる作業である。
何のためにその会議をするか 会議の目的は何かを「決める」ことだ。
上述の通り、会議に期待されるのは、何かを決めることだ。あなたが会議を開くのなら、何を決めるための会議なのかをよく考えよう。また、会議に参集される際は、目的が明確に設定されているかチェックし、不明と思われる場合は会議の主催者に質問しよう。
そして会議中や会議を締める際には、決めたいものが決まったか、会議の目的は達成されたのかを常にチェックしよう。
よくある目的例
- このプロジェクトを実施するか/しないか
- プロジェクトを中止するか/しないか
- この設計を製品に採用するか/しないか
- 製品を改善するために、どういった対策を行うか
- プロジェクトを期日までに完了させるために、誰が何をどうやっていつまでに終わらせるか。
目的が設定されていても、結論がでない場合、理由はだいたい下記に示すものだ。
- 決定できる人がいない。(人選ミス)
- 決定するための材料がない。(事前の準備不足)
こういう場合は、いくらねばっても無駄な議論が行われるだけで時間がもったいない。会議設計に失敗したのだ。失敗を受け入れて速やかに切り上げ、決定を導くための作戦を練り直そう。負け戦を続けても傷口を広げるだけだ。
アジェンダ(会議資料)を作ろう
何が議題か、(何が決めたいか)、そしてそれを決定するための根拠となる材料は会議前に資料としてまとめよう。可能であれば、会議の前にメールで参加者に送信し、目を通しておいてもらおう。
終了時間を決め、これを守ろう
日本人は時間に厳格と言われるが、それは仕事を始める時間だけである。仕事をいつまでに終わらせるかは大概ルーズで、それが長時間労働を生んでいる。会議は特にだらだらと続きやすい。事前に終了時間を決めておき、時間内に終わるように作戦を立てよう。また参加者全員に終了時間を周知し、終わらせる意識を共有しよう。先のアジェンダにも時間配分は書いておくと良い。
タスクには具体的担当者名を書こう
最終的な決定事項として、誰が、何を、いつまでにやるか、というタスクが決定されることは多い。その際、「誰が」という部分は可能な限り具体的な担当者の氏名を明記しよう。部署名にしてしまうと、責任の所在が曖昧となりきちんと実行してくれない。
議事録は大事
議事録は必ず作成する。せっかく決まった事項を確実に実施させるためには文書に残すことが絶対に必要だ。自分が仕事を忘れないため、また他人の仕事の抜けを指摘するためにも議事録は役に立つ。言った、言わないの争いにしないために、適切な議事録を作ろう。
最近の会議ではホワイトボードの板書を写真にとり、議事録とすることも多い。確かに手間はかからないが、議事録となるように板書するにはセンスがいる。数か月後に見返してきちんと理解できるかと言えば難しいだろう。
短期的な決定事項であれば、ホワイトボードの写真でも良いが、長期的な事項や重大な決定については、しっかり文書化する方が良い。自分自身にとって重要な会議であれば、議事録作成は買ってでもやるべきだ。そうやって作成した議事録は後から自分自身が意思決定のエビデンスとして使用しやすい形で内容を記載できるからだ。
なお、議事録を自分で作成する場合は、作成後関係者に議事録「案」として確認してもらい、了承が取れたのち正式な議事録として配布するのがセオリーである。
まとめ
とにかく会議は、人と時間というリソースを使う作業である。適切に開催してしっかり成果を出すようにしよう。
また自分自身が無駄と思われる会議に呼ばれたときは、本当に参加しなければいけないのかしっかり確認し、必要が無ければお断りしよう。無駄な会議で仕事の邪魔をされては困るのだ。