目次
製造業におけるプロダクトマネージャーとは
こんにちは。当ブログ管理人のkova(@KovaPlus)と申します。私は理科学機器メーカーに勤務するエンジニアです。今まで幾つかの製品を開発し、製品化してきました。その中では下記の業務を行なってきました。
- マーケットのニーズから製品に必要な仕様を抽出する。
- 具体的な設計仕様に翻案する。
- 機械設計を行う。
- 電気設計、ソフトウェア設計の仕様作成、開発の進捗管理。
- 試作機の組み立て、実験。
- 期待した性能が得られない要素の調査と改善。
- 販売できる製品にまで仕上げる。
- 展示会や商談などでの製品PR。
- 製品の製造フォロー。
- 製品のアフターサービス。
- 業界紙での製品発表や、関連分野での記事執筆。
- etc
入社した当時は機械設計をやっていましたが、所帯の小さい会社と言うこともあり、(半ば強いられつつも)色々な業務に携わってきました。その中で、専門性を高めた技術者ではなく、システム全体をいかに機能させて、価値を生みだすか、その価値はお客様や社会にとってどのような意味を持つか、に着目するようになりました。そしてそのために必要と思われることは、組織や役職の垣根を超えてでも達成するべく努力してきたつもりです。
一方で、既存の組織の区分けを超えた、私のこのような働き方、あるいは働き方の理想は、一体どのような職種に当たるのか端的な言葉で表現することができず、モヤモヤを感じていました。そんな中、出会ったのがこの本でした。
及川卓也さんの著された、「ソフトウェア・ファースト」です。
この本の中で、プロダクト・マネージャーという職種が下記のように定義されています。
「ユーザーの求めるプロダクトの理想を追求する役割で、「ミニCEO」とも呼ばれます。ソフトウェアの仕様や設計を決めてエンジニアやデザイナーに開発方針を伝え、プロダクト開発を主導するだけでなく、継続的な成長にも責任を負います。」
及川卓也 「ソフトウェア・ファースト」
この文章を読んだとき、まさしくこれが自分がやっている仕事なんだ、と気づきました。自分は「プロダクト・マネージャー」だったのかと。そして自分の中のモヤモヤが晴れてクリアになったのです。
しかしながら、すべてがしっくりきたわけでもありませんでした。それは世の中の文脈として「プロダクトマネージャー(以下PdM)」という用語はソフトウェア、IT業界において使われる傾向が強く、私のやっている製造業においてはまだ使われる事が少ないこと。そしてそのために、製造業向けのPdMへの情報が少ないこと。
例えば、下記に示す岡田康豊さんのノートではPdMに必要なスキルを、体系化して整理したフレームワークを示しています。
「プロダクトマネージャーに必要なテクニカルスキルを定義してみた話。」
この素晴らしいノートを読んで、とても感銘を受けたのを記憶しています。一方でこれはアプリ開発とかWebサービス向けのPdM論として語られており、私が携わっている製造業においてはそのまま適用できないな、とも感じました。
そこで本記事では、上記の岡田さんの記事を参考にして、製造業向けに、また私自身の経験や環境をもとにして、アレンジしたフレームワークを提示したいと思います。
(なお、本記事の内容については上司(同じくPdM)と議論を重ねて作成したものであり、私個人の独創ではないことを付記します。)
必要と考えるスキル
必要と考えるスキルセットを図で表すと下図のようになります。
項目を列挙すれば下記の6つです。
- Project management : プロジェクト遂行能力
- Development : 実験、開発能力
- Design : 企画力
- Presentation : 伝える能力
- Domain knowledge : 業界知識
- Business : ビジネス
この6つの項目をさらに下位の要素に分解し、マップとして示したものが下の図です。
それぞれのスキルについて、順を追ってみていきましょう。
Design:企画力
Design : 企画力 を一番最初に挙げたのは、これが最も重要な能力と考えるからです。PdMはプロダクト全体の成功を担うリーダーでなければなりません。リーダーとはすなわち、向かうべき方向を示す人間のことです。個々の目標をどうやって達成するかという戦術面ではなく、まず「誰のために何を行うか」という大局的な戦略・目標を設定することが大切な職務なのです。
プロダクトのミッション策定
上記の大局的な、目標、戦略の設定は、プロダクトのミッションを定めること、と言い換えることができるでしょう。
自分が手掛けるプロダクトは、世の中のどんな課題を解決するためにあるのか、なぜこのプロダクトが必要で、これ以外のプロダクトではいけないのか。それはどのようなにお客様に提供されるべきなのか、ハードウェアを売るべきなのか、ソフトウェアを売るべきなのか、知識、ノウハウを提供するべきなのか、あるいはそのすべてなのか、などなど。
広く、そして深く思考することが求められるでしょう。
ユーザーを考えた仕様の作成能力
プロダクトのミッションを元に、具体的なプロダクトを開発するためには、まず仕様を作る必要があります。仕様を作るにあたっては様々な観点から検討が必要ですが、まずユーザーの目線から見て、どのような仕様が求められるか、は重要な点です。
注意が必要なのは、ユーザーが本当に必要なものは、ユーザー自身も認識していない可能性がある、ということです。ユーザー目線を考えるときに、ユーザーや関係者(営業スタッフ等)にヒアリングを行うことは有効な方法ですが、それらの意見を鵜呑みにするだけでは、優れたプロダクトにはならないかもしれません。あちこち振り回された挙句、どっちつかずのプロダクトになってしまっては目も当てられません。
PdMとしては、ユーザーや関係者の意見の中から、より本質的な問いを見出し、それに応えるための仕様づくりが要求されます。
ビジネスを成功させるための仕様作成能力
大抵のプロダクトは商売のために存在します。商売は利益を得るために行われているということを忘れてはなりません。高邁な理想やミッションを描いてもビジネスとして価値が無ければ、何の役にも立ちません。
また、ビジネスを行う上では競合他社がほぼ必ず存在します。入札で機種が決定される場合を想定し、競合他社と比較したときに優位に立つ仕様を作成する事も求められるでしょう。
UX、UI
プロダクトをお客様が購入する時、お客様が本当に欲しているのは何でしょうか。製造業の場合、お客様は確かにプロダクトというモノ、物質を買うわけですが、お客様が買い求めているのは、そのプロダクトが人生や、業務において生み出してくれる価値や成果なのです。
UXはUser Experience であり、プロダクトを使用した時のお客様の体験、経験を指します。お客様はプロダクトというモノを買っているのではなく、それを使った時に得られる経験や、成果を求めている、との観点に立つ事ができれば、UX、そしてそれを提供するための窓口であるUI(User Interface)の追求はPdMの果たすべき大切なミッションの一つです。
Project management:プロジェクトマネージメント
マネージャーの仕事と聞いて真先にイメージするのは、このプロジェクトマネージメントではないでしょうか。(私だけか?)それぐらいイメージが強く、また実際重要な仕事ではありますが、PdMにおいてはあくまで必要な能力のうちの一つという位置づけになります。
プロジェクトの進捗管理
プロダクトの開発プロジェクトなどの進捗管理を行います。複数人の作業を監督し、遅れが発生していないか、遅れがある場合はどのように対処するか、などなど気を配ります。
不足しているアセットへの対処
アセットとは、ビジネスに活用できるあらゆる資源のことを指します。資金は潤沢で設備も申し分なし、たくさんの優秀なスタッフを指揮して開発できる。。。そんな環境で働ける人間などこの世にいません。現場では常に色々なアセットが不足します。そこへの対処能力が問われます。場合によってはPdM自らが手足となって実働することも求められるでしょう。
製造工程の問題解決
ソフトウェア、IT業界と製造業が異なるのは、「プロダクトはモノであり、製造しなければならない」という事です。製造に関する問題対応は広義におけるプロジェクトマネジメントと考え、ここに分類しています。
私が手がけるプロダクトは比較的小ロット、少人数での生産体制ですが、それでも生産の効率化、歩留りの向上等の課題は多々あります。それは、製造現場での問題なのか、それとも設計由来の課題なのか、そもそも仕様の問題なのか、適切に見極めて対応を考えねばなりません。
サービス関連
プロダクトがモノであるため、出荷した後のサービス対応もソフトウェアより大変になります。現地に作業員を派遣しての作業、部品交換などのモノのやり取りなどなど。これも広義のプロジェクトマネージメントと考えています。
Development:開発能力
PdMの仕事の中でも華々しいのは新製品開発の現場での活躍なのではないでしょうか。開発とは未知なる領域を切り開く作業であり、様々な技術的トラブルと日々向き合わねばなりません。
実際に自らが現場で開発を行わないにしても、バックグラウンドとして開発経験が無いと、よほどの能力がない限り現場のスペシャリストからの信頼は勝ちえないでしょう。ここの知識と経験の厚みはPdM職にとって重要な資産となります。
実験・開発能力
実験や開発業務を行う能力です。まず適切な目的を定め、その目的を達成するためにどのような手法、実験を選択するか。実験の結果をどのように解釈し、それをどう活かしていくか、という一連のプロセスをどれだけ使いこなすことができるかです。
何の役に立つのか定かでない実験を、なんとなく行って、意味がわからない結果を得た挙句、興味本位での実験を行う、というのは時間の無駄でしかないので避けねばなりません。PdMはただの研究者、開発者とは異なり、研究、開発、実験の成果を社会にどのように還元するか、そこからどのように利益を得るか、というところに大きな責任を負っています。
手段と目的が適切に設定されているか、常に目を光らせて実験のための実験、開発のための開発にならないように気をつける必要があります。
物理、数学、化学、その他関連分野の知識と応用
上記の実験や開発業務を行うためには、物理、化学、数学と言った理工系の知識や、その他関連する分野の知識と、それを実地に活用するための応用力が重要です。単に知識持っているだけでなく、その知識を目の前の現実にいかに関連づけて問題を解決できるかどうかが求められます。
設計・開発の知識と応用(機械、電気、ソフトウェア)
上記の理工系知識と関連しますが、より実践的な知識として、物づくりの実際的な知識である、設計に関する知識も必要となります。プロダクトにもよりますが、現代の製造業を想定するなら、機械設計、電気電子設計、そしてソフトウェア設計に関する知識を持ち、これらを応用して問題解決できることが必要です。実際の設計経験者であれば、その経験はとても有用でしょう。また複数分野にわたっての経験や知識があれば何よりでしょう。
仮に現在経験のない分野であっても興味を持って自分の手を動かしてみることはよいことです。特にソフトウェアはPCやスマホがあれば、ほとんどお金をかけずに始められるので良いと思います。電気設計はその次にやりやすく、機械設計、加工は一番個人で取り組みにくいテーマだと思います。
実験システム、試作機を作る能力
上記の設計スキルとも関連しますが、実験を行うための簡易的なシステムや、開発テーマを検証するための試作機、実証機を作ることも時には必要です。机上で延々と検討していても、ものづくりは進みません。さっさと試してみれば良いのです。失敗もまた一つの成果で、「そのやり方ではうまくいかない」という事がわかったことが成果なのです。
「過ちを気に病むことはない。ただ認めて、次の糧にすればいい。それが、大人の特権だ。」
機動戦士ガンダムUCの登場人物、フル・フロンタルのセリフ
大人の特権かはともかく失敗を過剰に恐れるのは考えものです。開発業務は本質的に、今までにやった事がない事をやるというのがその特徴であり、その中では予見できない失敗にも遭遇するのも当然です。失敗のリスクが一切ない開発に取り組む価値など無いのです。
失敗は当然起こるものと考えておき、いざ失敗となれば、すぐに状況を把握しどう対処するかということに集中できるように、心得ておきましょう。
(もちろん「予見できる失敗」は避けるべく、事前に十分に検討しなければなりません。恐れを知らない若々しさも、恐れを知った年長者の熟慮も、PdMが判断を下すにあたっては必要です。この塩梅はセンスがいるので、我々のような凡人は、様々な失敗を経験し、その経験からセンスを磨かねばなりません。また事前に失敗を考慮した緊急回避のためのバックアッププラン(コンティジェンシープラン)を考えておくとことも大事です。)
少し話が脱線しました。百聞は一見に如かずとはよく言われますが、一度でも実際に手を動かして実験してみることが大切でそのためには、その環境を構想して作りあげる能力が求められます。
製品を”使いこなす”能力
PdMは担当するプロダクトの事をよく知り、そのプロダクトを使いこなせる事が求められます。自分自身がプロダクトのヘビーユーザーであることが望ましいでしょう。
Presentation:伝える能力
本フレームワークで一番特徴的なのは、この「Presentation:伝える能力」を一つの独立したスキルセットとして取り上げているところかもしれません。それは我々がそれだけこのスキルを重視していることの現れです。
外部への成果の発表
一般には「エヴァンジェリスト(伝道者)」と言われる役割かもしれません。自分たちの成果を外部に発信し、プレゼンスをあげるための活動です。業界紙への寄稿、学会での研究発表、セミナーへの登壇などの機会があれば積極的に引き受けて前に出ていきましょう。外部への発表を念頭においておく事で、普段の業務の中でも発表のためのネタ探しする必要がでてきます。アウトプットを意識して業務をすることで意外と仕事の質も向上したりするので、成果発表を積極的に行うのは優れた戦略と言えます。
お客様に適切にプロダクトの魅力を伝える(プリセールス)
営業担当者と同行して、装置の説明を行ったりする能力です。場合によっては、自らデモンストレーションをやることもあるでしょう。ここで大事なのは、お客様の目線に立って必要な情報を提供することです。技術者のコダワリや苦労はお客様にとっては重要でなく、お客様にとって価値を感じてもらえる部分をアピールしなければなりません。
関係するステークホルダーに働きかけて巻き込む能力
PdMとは、職種の名称であって、職位ではありません。どのような職位の人がやるにせよ、今まで述べてきたような「ミニCEO」と呼ばれるような業務を行うにあたって、十分な権限が伴っていることは稀でしょう。
それでもPdMには成果が求められます。そのため、関係するステークホルダーにうまく働きかけて、プロダクトの成功のため協力してもらえるように巻き込む能力が必要です。どうやって協力してもらうか、ひとそれぞれスタイルやテクニックはあろうかと思いますが、一番は人から信頼されるような人間であること、が要件なのではないでしょうか。
ちなみに、GoogleのPdM人材の募集要項には下記の表現があります。
直接の権限なしで複数の利害関係者に影響を与える能力。
参考:「GAFAのプロダクトマネージャーのJob Descriptionを比較する」
まさしくドンピシャの表現をしていますね。
Domain knowledge:業界知識
プロダクトを使用する業界に対する知識
プロダクトを使用するユーザーはどのような業界、業種で景気は良いのか、悪いのか、今後の動向などを把握していると製品の企画に役立つでしょう。
競合他社に対する知識
よっぽどのブルーオーシャンでなければ競合が存在するはずです。プロダクトの企画をするにあたっても競争相手に対する知識が必要になります。
補助金・制度
プロダクトの開発等を行うにあたって、公的な補助金や支援制度などが利用できれば助けになるでしょう。そういった情報へのアンテナもはっておく必要があります。
競合しうる技術に対する知識
単なる競合製品や、競合メーカーではなく、競合”し得る”技術に対する知識です。プロダクトの置かれた環境は日々変化していきます。今までは競合として認識していなかった技術や製品が突如として自分たちと市場を奪い合う関係になるかもしれません。
例えば、航空機による旅客運搬を行うビジネスにおいて、競合は格安航空会社だけでなく、インターネット回線を使用したTV会議も大きなライバルとなりつつあります。
Business:ビジネス
最後は「Business:ビジネス」の領域です。上述したように、大抵のプロダクトは営利企業により作られており、ビジネスの観点を抜いては成立しません。PdMとしてはビジネス面への理解と配慮が不可欠です。
原価、工数、資材管理の知識
製造業を考えた場合、特に原価(材料費、作業者の工数)や、仕掛品や在庫の管理が、経理上どのように扱われるか、知識が必要です。
製品のビジネス継続性、発展性
扱っているプロダクトは、事業としてどれぐらいの寿命を持つのか、一過性の市場なのか継続性があるのか、それは発展させ、継続させる事ができるのか、できるとしたらそのためにはどうすれば良いのか。。。
経営、財務諸表に関する理解
会社の経営状態に関しても理解しておくと良いでしょう。企業の体力があればそれだけ大胆な手や、長期的な観点に立ったプロダクトづくりが提案可能です。もし、そうでないのであれば、短期的に組織を存続させる事を優先して考える必要があり、そういった事情はプロダクトづくりにも反映されてきます。
社外と連携してビジネスをする能力
ビジネスを進めるためには、社外との連携も有効です。大学や公的研究機関との共同研究と言った産学官連携であったり、民間同士であっても利害が一致するのであればアライアンスを組むことも可能です。
社外の人たちと仕事をすることで、自分たちの仕事やプロダクトに対する見方が変わりますし、様々な気づきや刺激を得ることも期待できます。外部との連携は積極的に進めたいところです。
まとめ : 「正解」のない世界で決断を
以上が、我々が考える製造業におけるPdMのスキルセットです。
長々と書いてきましたが、製造においても、PdMのミッションはシンプルです。要はどういう風にやるにせよ、最終的にプロダクトを成功させる事がPdMの至上命題で「そのためには何でもやりなまっせ」という事ですから。
しかし、このスキルセットについては正直自分で書いていても、途方もない広さと深さの要求が並んでいて、怖気付くところもあります。
なにせ、PdMは「ミニCEO」。ミニとは言っても「CEO」なのですから、要求を挙げていけばキリがなくなるものだと思います。
これだけの分野をカバーしなければならないのですから、PdMとして働いていくならば、日々の業務内外での研鑽が必要です。あらゆる職種において言える事ですが、自分の得意を伸ばしたり、不得意な分野をカバーしたり日々の精進は欠かせないでしょう。
とは言え、1日は24時間しかないのです。これだけの要求を全て満たすスーパーマンなど、現実にはそう多くはいないでしょう。
私自身、ここに描いたような理想には程遠いPdMであり、日々悪戦苦闘の毎日です。
ここに挙げた全てを自分一人が果たさなくても、果たせなくても良いのです。
足りない部分は、得意な他人に任せてもよいのです。そのために、各分野には専門家と呼ばれる職種たちがいるのですから。PdMがその職責を果たすためには、彼らをどうリードしてやるか、と言うところにもかかっています。
そう考えた時、大切なのは山積する仕事の中から、「自分が」今まさにやるべき一つの事を見出して断固として行うことです。「やるべきことを決めてそれをやる」と言うことは、「他の事はやらない」という事でもあります。しかし往々にして目の前の課題はどれも劣らず重要に見えるもの。一つに集中する事は簡単ではありません。
しかし、そのような難しい判断だからこそPdMの決断が求められるのです。論理的に正解が得られるような問題ならば、賢い人がいれば誰も解くのに苦労はしません。逆に言えば誰が解いても同じ答えになるでしょう。しかし複雑で矛盾し混乱した状況の中で論理的に問題を解けない時こそ、PdMは状況を透徹した目線で解釈し、自分の全人格を頼りにして決断をする必要があります。
スポーツ評論家の二宮清純氏はリーダーに求められる素養として次のような言葉を残しています。
「判断」よりも「決断」
二宮清純
この言葉の解釈ですが、私としては
論理的に行う「判断」よりも、時に非論理的でも行わざるを得ない「決断」の質によりリーダーの価値が決まる
という事だと理解しています。まさしくPdMの心構えと言えるでしょう。
時としてそう言った決断に登場する選択肢は、どれも失敗への道につながるものかもしれません。正解を選べる保証はなく、正解が「存在する」保証すらもないのがこの世界なのですから。それでもその決断を最大限の理性と、自分の価値観を以って下していく、その行為を楽しいと思える事がPdMに求められる何よりの能力かもしれません。